荻原浩著『明日の記憶』

若年性アルツハイマーの宣告をうけた49歳広告代理店部長、せめて来年のひとり娘の結婚式までは内密にと思うが少しずつ自分の頭が自分のものでなくなっていく恐怖、孤独と不安を一人称で掘り下げた問題小説。
彼がアルツハイマーを自覚する冒頭のシーン、企画会議でハリウッド俳優の名前(ディカプリオ)がでてこなくて、作品も絵は浮かぶがタイトルがでてこず「船が沈む映画にでてた…」「ああ、タイタニックですね」。って、まるでこれってアタシのことかと。うううっ。でも「それがみんなアルツハイマーになるんならあしらはとっくに廃人なのでは(笑)」と友人に一蹴されて、そーだよねと一安心(安心してていいのかよ>俺)。
アルジャーノンに花束をアルジャーノンに花束を (ダニエル・キイス文庫)では、知的障害者の男性が知力回復手術を受けて天才に変身するんだけれどもその効果は長続きせずに、徐々にもとの知的障害者に戻っていく。おのれの知能がどんどん低下してに戻っていく過程を天才になってしまったがゆえに100%の自覚を持って受け入れていく、物悲しい話。『明日の記憶』を読んで思ったのは、アルツハイマーって、リアル、アルジャーノン体験なんだね。アルジャだと、もとのレベルに戻ったらそこで停止するけども、アルツは壊れ続けるし、SFでもなんでもない。本書によれば若年アルツは4〜7年ぐらいで体が生きることすら忘れてしまって機能停止し、死に至るそうである。