本日のよろこびごと。(306)


たまには 下世話な ポイズンを(喜)
今日は本の感想。

美容整形クリニックに通う女たちの運命と欲が交錯する美容ミステリー。金も名声も手中にした女優は若手女優と加齢の突き上げに焦燥を覚え、傍目に幸せそうな主婦はもう一度誰かに強く求められたいと切願し、整形で売れっ子となった元ブスのキャバ嬢はゴールを高望みし、リッチなお嬢は醜系恐怖で整形を繰り返す。普通より少しネジが緩めで、美容整形のハードルを乗り越えた女たちが行きつく先は…ホラー(笑)
ああ、気持ち悪かったぁ〜。
っていう読後感でした。
美容整形を否定する気はぜんぜんなくて、容姿を気に病んでいた女性が整形で笑顔になるテレビショーをみると、やってよかったねと思う。
自分でも顔があと少し重力に負けたらフェイスリフトぐらいはしたい。ついでに額の皺と、歯並び、あと鼻の穴も少し小さくして、それからそれから…一つ直すとバランスが崩れてドミノ式、そんな戻れなくなりそうな恐怖がブレーキになっている。
小説の中の主婦も同じで、美容整形をすることには標準的なためらいを覚え、でも一つやってしまうと次から次へと堰を切ったように繰り返すようになり、もちろんその動機には男の影があったりしてね。穏やかで優しい夫との見るからに順調な家庭、ただ息子が少し反抗期で、ただ夫とはセックスレスなだけ。今までは努力次第でそこそこ理想を実現し制御できていた人生の小さな躓き。そんな心に隙間風が吹いたとき職場の同僚に待ち伏せされて、
「好きで好きで我慢できなかったんです」
抱きしめられて、強引に唇を奪われる。ふふっ、そんな超昼ドラマ的安っすい展開が意外とツボなんですわ。
女たちをあざ笑い翻弄するも、軽妙な語り口で、
「でもなんだかんだ言って、あんたらこーいう話好きでしょ?」
と読みながら内面のゲスさを暴き出される痛痒はある意味快感。うっ、ひどい。わかったよ認める、好きだよー、悪いかーっ!みたいな。
もちろん下世話魂を満足させるような話ばかりを読んでるわけじゃありませんぜ。と、いちおう言い訳。この手のエッセンスは生きる上には必要な中和剤なのだ。
終盤、物語は現実のカリカチュアよりホラーっぽさが加速する。ホラーだから、現実とは違うから、自分とは重ならないから、<だから〜>を言い訳に読み進め、最後にページを閉じた瞬間の、
「ああ、気持ち悪かったぁ〜」
という満足感(笑)
デトックスだけではツマラナイ、だから。