荻原浩著『僕たちの戦争』

女とサーフィンで毎日を埋め気にいらない仕事はこっちからお断り、な2001年のフリーター健太が、昭和19年の空軍兵卒吾一とタイムスリップによって入れ替わる、タイムスリップ青春白書。
現代の若者が特攻隊へタイムスリップという設定で今井雅之さんの『The Winds of God』を思い出しつつ読む。御国のために命を賭す覚悟をしていた吾一は平成の太平楽イカれように「こんな日本にするために俺たちは死ぬつもりだったんじゃない!」と嘆くが、いつしか「それでもここに生きているやつらが自分たちを幸せだと感じていればいいんじゃないか」と思うようになる。自分最優先で快楽以外の生には執着なしの根ぐされ健太が、生きて帰るためにと、我慢すること人の気持ちを理解することを覚えていく。それぞれの心境の変化が面白くて引き込まれる。
吾一が健太の両親に対して持った印象には苦笑せずにいられない。健太の親はおそらく30代後半から40代前半、昭和1桁男の目には平成の父母はいい年をしてやけに幼稚な会話をかわし児戯めいてはしゃいだりバカを言ってみせたりするようにうつり、めんくらうのだ。はぅ、昭和19年ならば40代は立派な初老なのか!? がーん。
吾一の楽しい時間も健太の人生勉強も着々と捗るが時代は待ってくれない。やがて健太は回天(特攻魚雷)の任務につくことになり…。結末のつけ方には食い足りない感がなきにしもあらずだが、余韻が残って効果的なのではなかろうか。行間は読ませないけども、読了後にいろいろと考えさせるのでありますれば容易には忘れがたし。