皆川博子著『薔薇密室』

20世紀初頭のポーランドとドイツを舞台にしたロマン伝記小説。薔薇の僧院、美貌の脱走兵、サイコドクター、幽閉された少女、徘徊する幽霊、まあそんなものがちりばめられた耽美歴史もの。
何が現実で何が虚構か、今読んでいるところは過去なのか未来なのか、うーん。読者を迷路に追い込む仕掛け満載でまったく油断がなりませぬ。かなり濃いので好き嫌いはあろうが面白いことは間違いない。
実は本書は存在からして仕掛けがあるのですね。著者の『死の泉』たらいうの幻想小説に登場する架空の訳者*1の訳書紹介として架空の奥付に記されたタイトルにこの『薔薇密室』というのがある。それをほんとに書いちゃったのね!というのが本書であるらしい。うーむ、深いのか単純なのか、マニアなのか、こだわりなのか。まあ、「踊る大走査線」があたったからってそのサブキャラで映画をつくっちゃうのよりはぜんぜん好ましいですが*2。なのでもしかしたら『死の泉』に多少はリンクしている部分があるやもしれず、いやわからんが未読ゆえ。そっちをも読んでみるかといさんではみたが『薔薇密室』が濃ゆすぎたので、しばらく時間を置かないとムリっぽです。つまりは、アンジェリーナのモンブランを食べた後にはもうしばらく甘いモンはいらないわ、というのと同じ感覚。

*1:『死の泉』は全文が訳書という体裁をとった一種の偽書仕立て

*2:柳の下のユースケで終わりかと思ったら、ギバちゃんのも作るとか。これって2本立てなの? 長さんが生きてたらそれも1本つくってたのかも。あきれるかえるドジョウ探しっぷり