乃南アサ著『火のみち』

戦後の混乱期で家族のほとんどを失った青年は妹を守るために一人の男を殺し10年間服役する。刑務所で習得した焼き物の技術を手に、出所後も備前焼の窯元で修行を続け、やがて作品の評価が高まるが、ふとしたきっかけから青磁の世界へと傾倒しはじめる。窯の火と己の罪とを見つめ続けた男の60年の記録。
上下巻でかなり読み応えあり。罪を犯した人間は刑務所で罪を償っても、自分の心が赦されないかぎり救われることはない。それゆえに長く苦しみぬいた男が哀れでもあるが、しかし男の性格にもわりと問題ありで・・・。