篠田真由美著『失楽の街』

建築探偵シリーズ最新作。1974年三菱重工ビル爆破事件から30年、再び東京の街を震撼させる爆弾魔が跳梁を開始した。相次ぐ愉快犯的犯行の点をつなぐと、大正時代に近代居住空間を目指して都内各所に建築された朋潤会アパートとの接点が…。
本書の建築は架空の朋潤会アパート、これは当然のことながら同潤会アパートがモデル。その歴史的意義、意匠の魅力、かつてはひとつのコミューンとして機能していたことなど、実に興味深いし、どんどん立て替えられてしまうのがもったいないなと思う。確かに老朽化して安全面からすると取り壊すのは仕方ないが、壊したらもう二度と再生できないものもあるのだ。
アタシは古いアパートや一軒家に憧れている。ペンキを塗ったり、好きなところに釘を打ったりしたい。慣れない日曜大工でぶかっこうな棚をつけてもそれが浮かないような、懐の大きさがいい。でも実際に住んだらごきぶりがでたり、風呂場の壁からムカデがわいたり大変だとか。それを聞くとアタシにはムリかと。同潤会アパートの中には建て替えたあとに、一部かつての建築物を再現させるところもあるらしい。そういうところに住めたら幸せだろうなと思ってみるぐらい、いいじゃん。