群ようこ『ヤマダ一家の辛抱』

団地に住まう高校生の娘二人を抱えた熟年共働き夫婦。家庭の内外で起こるちょっとした事件をユーモアたっぷりに描いた長編小説。初出は新聞連載。
おもしろいのう。たまらん。独特のペーソスとユーモア、そしてささやかな毒。世界観はちびまる子ちゃんに近し。ペーソスはもっぱら父親の役どころ、娘の服に触ろうとしたら、脂がつくから触るなと怒られてしょぼんとしたりと、ああ切ないねえ。
どろどろになりそな設定を描いてみても、なんでだか湿度0%なところが群さんの良さである。これに先立って読んだ小説集『無印結婚物語』『無印不倫物語』も、長編『キラキラ星』もそうだった。
『キラキラ星』キラキラ星 (角川文庫)は塀からでてきたこわもての小説家(経済観念ゼロのばくち打ち)と、やっぱりちょっと壊れたバリバリ編集女史のピュア〜なラブストーリー。ええ、どんなにえぐかろうと麻雀博打打ちまくろうとも、ピュアなのですわい、心根が。
エッセイ『猫の住所録』ネコの住所録 (文春文庫)では近所の犬猫どもとの交歓から、迷い込んだ虫たちとのふれあい記まで、どこを刻んでもその観察眼がユニークでとつとつとして明るい。んでもって、群ファミリーはむつごろうファミリー並みに動物が好きであるらしい。チャーハンを食っている食卓に蟻を発見しても、ご飯を運ぶ姿を健気と思って、卵もやろう、肉もやろうと、皆がつぎつぎと机に撒いてやるって…あ、ありえない! 不思議ちゃん一家じゃー。
ああ、くせになる。今、群さんの本を怒涛のように読みまくっているとこ。