鷺沢萠著『ビューティフル・ネーム』

日本名(通名)の前川奈緒として中高6年間を過ごした奈蘭が高校で堂々と本名を名乗るチュンス先輩に刺激されて葛藤する中篇「眼鏡越しの空」他3編(未完の原稿含む)。
本書の原稿は未完含めて、通名というものに焦点をあてたもの。己のアイデンティティーに悩む奈蘭の姿を、著者自身20歳過ぎに祖母から流れる自らの韓国の血を意識したときの葛藤が反映されている。奈蘭はちゃんとふっきれているので、おそらく著者もそうだったのだろう。