浅田卓弥著『君の名残を』

友恵、武蔵、志郎の3人の中高校生が源平合戦の時代へタイプスリップし、歴史上の人物して過去を生きる。あまりにも違う死生観に翻弄され反発するが、歴史の中で己の果たす役割をいやおうなしに自覚させられ…。
四日間の奇跡』でこのミステリーが面白い大賞を受賞後の第一作。小説家もこなれてくると、最初の1ページだけですーっとその世界に読者を引きこんでしまうものだ。さすがに2作目にそれを求めるのは酷。冒頭部はいくぶんもたつき気味だが、源平の時代を描いて乗り始めたら、ぐいぐいと引き込まれた。高校生のタイムスリップものなんて、なんて書き古された題材だろう。漫画の原作かという意地悪い気持ちもなくもないが、受賞作よりも面白かった。