唯川恵著『ベター・ハーフ』

ベストな相手と理想どおりの結婚式を向かえたはずの花嫁控え室で女に自殺未遂をされ、義理と意地とで行った新婚旅行もまったくの別行動。成田離婚だなと心に決めて実家に戻った永遠子だったが、両親が離婚していて虚ろな顔の父親がTVを見ているありさまに仰天。寝場所をもとめてやむなく新居へ行くと、夫の文彦までもが実家に妹夫婦が同居していて部屋がなくなっていたとやってくる。気持ちは離婚モードのままにふたりの生活は最悪のスタートを切って……そのままずるずると続いてしまった12年間の結婚生活。結婚ってこんなもんかもしれませんよというような、ちとシニカルな長編小説。
ふたりのぐだぐだな結婚生活は波乱ありすぎて面白い。結婚している人ならば、もしかして一つや二つぐらいは「うっ」と我が身にかえるものもあるかもね。お話は平成元年からはじまり2000年の幕開けまでの12年の時間をえがく。各々の時代を彩った実際の事件(バブル崩壊、ダイアナ妃事故死、地下鉄サリン事件阪神大震災、など)がでてくるたびに、「そうそう、この頃だったわね」と一緒に平成史を振り返ることができるという特典もあって楽しい。こうして振り返って見るとなんかイヤな事件ばかり。年号の「平らかに成る」*1とはまったくもって逆じゃなかろうかと思われてならず。

*1:出展は「史記」と「経書」で「国の内外、天地に平和が達成される」というで名づけた意味らしいが…