春口裕子著『女優』

大手化粧品会社広報室勤務の佳乃は美人で才女の誉れ高く、つねに周囲から「佳乃さんはパーフェクトね」「さすがね」と誉めそやされる。ところが完璧主義が高じるあまりに人としての道を少しづつ踏み外し、ついに深みに足を捕られて…ホラーサスペンス。
肥大した見栄や自意識を抱えた女は、常に他者からみられる自分を演じ続けている女優なのだ、というのがタイトルの意味。女優がでてくるわけじゃない。自意識過剰については己もひごろより思い当たる節が多く、ほどほどにという教訓を真摯にうけとめたのであった。
ひきこもり、対人恐怖、ヴィーナス・コンプレックス、片付けられない女たちといった現代病を絡めたとこは意欲的でよかったけれど、おもしろくするためとはいえラストが作りこみすぎかと。そこがホラーの宿命なのかもしれんが。