酒井順子著『観光の哀しみ』

楽しいはずの旅行なのに現地に着いたとたんに感じる寂寥感はいったい…。観光は実にさまざまな哀しみ孕んでいる。そもそも招かれてもいないのに勝手に訪れて、そして観光客用ゲットーに隔離され、現地の人も知らないお土産を買うではないか。場所、交通機関、宿泊施設、同行者などあらゆる方向からその哀しみを分析していく、もの哀し〜いエッセイ。
なんといいますか、酒井順子という人は自意識が異常に肥大している人なのかもしれません。とはいえまあアタシもそう大差ないからこそツボにはまるというもので、ふっ。
サービス業におけるアットホームという言葉が「プロに徹していない」ことの隠蔽に使われるとか、互いに気詰まりな思いを抱きながらもとりあえず満面の笑顔で家族写真に収まることが家族旅行の哀しみであり意義であるとか、さらに旅のカリスマ対決のくだりでは(梅宮)アンナ旅vs(沢木)耕太郎旅が殊に秀逸。