本日のよろこびごと。(977)


若すぎる 出産だとて 騒がずに(喜) 
3月中にBSプレミアムで見た面白かった映画の感想を書いておこうっと♪

2007年米加合作、監督:ジェイソン・ライトマン、出演:エレン・ペイジマイケル・セラジェニファー・ガーナー
恋人未満の男友達とつい好奇心で初体験し妊娠してしまった16歳の高校生ジュノの出産までのゴタゴタを、ユーモラスで抑制のきいた青春映画として描いた秀作。
十代での妊娠といえば志田未来主演のドラマ「14歳の母」が記憶に新しい。あれのゴタゴタはえぐかった。志田の両親はショックで混乱し家は一時大荒れに、赤ちゃんの父の家では会社経営の母が子育てを失敗したとゴシップ誌で叩かれて社会的に抹殺されたり。ドラマだからとはいえ、一部はリアルで後はやりすぎな展開が続いたが、この映画のゴタゴタは驚くほどに穏やだ。
ジュノの家は、父と義母、義母の生んだ弟の3人暮らしで、離婚した母とも連絡を取りあってはいる。少し複雑な環境だが、たぶんアメリカではわりと普通。妊娠を告げられた家族はそのときはちゃんと定型どおりに驚いても、彼らはみなドライでさばさばと現実を受け入れてあとはもうさっさとジュノの判断に任せることに決める。ヒスったり泣いたりしないのがいい。
14歳と16歳という違い、お国柄もあるだろう。にしても「14歳の母」とこんなにも違うなんて。社会がマチュアなのかな。
学校でのクラスメートたちの受け止め方もまた、「やっちゃったね、でもまあ自分でなんとかしなよ」程度のぬるい反応で、クラスメートのちょっとした変化の一つとして受け入れて後は放っておく感じ。腹ぼてを奇異な目で見られることはあっても、放校されたりいじめられたりの気配はない。「14歳」は学校が教育や周囲への影響という言葉で外へ放り出そうと画策していたのとあまりにも対照的だ。
ジュノはひとりで、時々友達と相談しながら考える(親に頼るのは本当にどうしようもなくなったとき、最後の最後だ)。
子供をどうしよう?
アメリカの新聞には「予定外の妊娠をした女性が受けられるサービス」の告知がでているらしい。よし、そこへ行こう。それは出産をしないという選択なのだけれど、すんでのところで引き換えし出産することを決めた。
さて、出産を決意してジュノは熟考した。学生の自分には生活力がなく育てることは不可能だ。生物学的父親はクラスメートで、今もいい友達だが「そもそもつきあっていない」ので結婚するという選択肢は念頭にない。彼は少しなよなよしたスポーツマンだ。ジュノのお腹の父親であることは普通に周知されている状態で、波風が起こることもなく今までと変わらない学生生活を続けていた。ただジュノと自分は「つきあってたと思っていた」のだけれども。この彼がなんかいい。
ジュノは新聞広告で里親をみつけ交渉し、気楽に遊びに行ったりと交流していく。そして交流が過剰になりすぎたらちゃんと引く。普通の映画やドラマならばその過程でジュノが成長していく姿を描くのだけれども、ジュノはもとから考え方が大人でしっかりしているので、母性に目覚めたぐらいで、人間として一皮むけるというほどの成長はみせない。ただ自分が「ものすごく普通でちょっと問題あり」だと思っていた自分の家が「なかなか悪くない家」だったことや、なよなよした男の子の大きさに気づいたりする。
出産までの9か月が、平凡な田舎町の美しい季節の変化とともに淡々とつづられ、出産を終えてジュノは元の生活に戻っていく。ただほんの少し前より楽しい世界が待っている。