本日のよろこびごと。(889)


市役所に 通報したり しないんだ…(喜)

  • 昔の人って強いなぁと感心させられた話

「こないだ庭に蛇がいてね」
昼食を終えてまったりした空気の中でまったくもって平和な口調で母が口にした内容は、アタシからすれば平和どころの騒ぎじゃない話なのだった。
「えっ、蛇っ?!」
実家は千葉郊外の新興住宅地にある。新興とはいっても、建売を買ってから四半世紀経っていて、そりゃあ、小さな雑木林的なものがぽつぽつ無くもない。無くもないとはいえ…。
「くちなしの樹上に太い紐みたいなものが引っかかってるなと思ってよ〜く見たら、お隣さんの樹にまたがるようにうねうねって」
ええっ!
「で、ちょうど持っていた竹ぼうきの柄で持ち上げてみたら、ぶらーん。あらぁ、やっぱり蛇だわぁ…って(笑)」
その話振りに、蛇の存在に怖れた気配なし。
「えっと、それ、どれくらいの蛇っ?」
話だけでアタシは動揺しているというのに。
「結構大きめの。この辺りで蛇なんてみたの初めて。珍しいわよねぇ〜」
珍しいってそういう問題?
「それでお隣さんに『蛇をみたことある?』って聞いてみたの。そしたら『その蛇なら、うちの庭の物置の下をずーっとねぐらにしてるのよ』って。何年も。そういうことみたい、ふふっ」
「へー、そうなの…(って、それでいいのか?)」
「そう、ふふっ」
あ、いいのか…。
というふうに、平和に始まった蛇話は平和のうちに終了したのであった。めでたい。
ってか、いやちょっと待ってくださいよ。普通、蛇が出たらもっと大騒ぎしない? 心臓がとまるぐらいに驚いて、まさかと思って恐る恐る確認してから室内へ逃げ込んで、
「く、くく、駆除しないとっ! し、市役所に電話っ? 市役所でいいのっ??」
と大騒ぎしまくるもんじゃないのか。そう思うアタシが、軟弱な都会っ子すぎるのかもしれんが。
蛇にまったく動じない母。庭で鶯が鳴いてた報告とさほど変わらぬ口調で蛇の訪れについて話す母。老いてずいぶん頼りなくなってしまったのに、肝っ玉の太さはさすが昔の人である。平和に生息している蛇の暮らしを脅かすことなく、昔の人はこのようにして自然と共存していたのだなぁ、昔の人って強いなぁと改めて感心させられたのでありました。