本日のよろこびごと。(740)


信長も 女なら愚かと 男が描く(喜)
いやあ、とんでもねぇドラマを見ちまったなぁ。2夜連続の1夜目を鑑賞し終えたばかりで、そのほやほやの感想をちょこっと、

  • 『女信長』第1夜

出演:天海祐希内野聖陽長澤まさみ玉山鉄二中村獅童藤木直人佐藤浩市西田敏行
これだけの実力ある役者陣を揃えておいて、はー、なるほどこーいう時代劇を撮りますか。さすが近頃のフジテレビは妙な方向へ勢いがありますねぇ(←嫌味です)
織田信長が女性だったというトンデモ設定は安っぽいとはいえ、やはりそそられる。そのトンデモさを踏まえ、歴史の上澄みをなぞりながら通説と異なる解釈をパズルのようにあてはめて辻褄を合わせた手腕はお見事、うまいこと話をこさえてるなぁと思う。トンデモ設定なのだからこれぐらいはアリでしょうと、前半はそこそこ面白く。オールスター的お祭りキャストならではの、誰が誰を演じるのかという興味深さも加わり、信長のうつけ行動がただ生母に拒絶されてグレた浅薄な愚行にすぎないというのもまあまあいいさ。
なれど後半、信長の女の性が顕在化してくるにつれて次第に視聴意欲がウナギさがーり。その症状は「こそばゆい」から始まり「居心地が悪い」が「気分が悪い」へとどんどんと悪化、終いには頭がくらくら。
信長の天下統一の目的が“戦のない平和な世の中にしたい”という現代的なものであることはいいとしても、彼(彼女だが)の行動に武将として誇りというものが感じられないのがつらかった。
浅井長政(玉鉄)の美貌に一目ぼれした信長は、「天下人の器と尊敬しております」と己を崇める長政に対し、最初の接見でいきなり装束をはだき裸身をさらして(つまり女であることを明かし)、
「どうだ、こんな信長はもはや尊敬できまい」
「いえ、ますます素晴らしい方だと…」
そして抱き合い倒れこむ二人…えーっ、えええーっ、マジかよ、おいおい。つーか、長政、もっと驚けよ(笑)。初恋の男と肌を通じても嫁ぐわけにはゆかぬ信長は己の身代わりとして妹の市を長政へ嫁がせることにしたのでございます、ってか、えっ、そうだったんかいっ! しかし市に隠れて二人の逢瀬は続き、
「私は信長として天下を取った後には、お前にその地位を譲るつもりだ」
などと閨で。ワインを口移しあったその流れで倒れこむ二人…。えーと、アタシは今何をみてるんだ? ハーレクインか? ハーレクインだったのかっ???
こういうパロディドラマに腹を立てるのは狭量だが、武士の魂を汚されているような気がしてしょーがない。“お市浅井長政は政略結婚でありながら仲睦まじい、戦国の世に引き裂かれた悲劇のおしどり夫婦だった”という大好物な部分に三角関係や愛憎のもつれというゲス解釈をあてはめてとことん軽薄にしやがったのは許し難い。長政を、信長を抱いた手で妻を義務で孕ませ女に平気で手を上げるお猪口DV男に、市を、夫を寝取った姉(信長)を陥れんと動く嫉妬女に描くだなんて。はううっ、いい話が酷い話に改竄されてもうてるやんけーっ。
信長といえば最近見たばかりの『信長のシェフ』』*1。同じようにトンデモ設定とトンデモ解釈で戦国の争いごとのほぼすべてを料理対決で決着していたかのように歴史を改竄していたが、こんなやりきれない気持ちにさせられることはみじんもなかったというのに…。
天海さんが大好きなのよ。でも、怖いもの見たさでも明日の第2夜は見たくないっす(涙)

*1:2013年1月〜3月テレビ朝日23時15分からの深夜枠にて漫画原作をドラマ化、現代から戦国時代にタイムスリップしたシェフが信長に仕え…という話