本日のよろこびごと。(641)


アプローチ 違えどどちらも 誠実でした(喜)
昨夜の深夜特番が面白かったのでその感想〜♪

  • 『戦う建築家!FIGHTING ARCHITECTURE』

内容は二人の建築家にクライアントの要望する家を3週間でプランニング〜模型まで仕上げ、スタジオでプレゼンさせて、最後にクライアントが自らの好みでジャッジする、公開模擬コンペ。1時間弱の実験的特番です。<クライアント>
俳優・沢村一樹氏。3人の息子と妻の5人家族で暮らす、内と外の区切りのない開放的で、互いの距離を保ちつつも存在が感じられて、自由度のある家を御所望とのこと。<二人のコンペティター>
参加してもらう建築家2名の人選が番組成功のカギだとするならば、まさに大成功だったと思う。ゲストの建築ジャーナリスト青野尚子さんに「バッハとモーツァルト」と例えられた対照的な、西田司氏と谷尻誠氏。実直と奇想。
番組では、発想→思考錯誤の過程、具現化手法、仕事への意識などをじっくりと見せることに多くの時間を割くことで、二人のアプローチの違いをより鮮明に浮かび上がらせていた。<例えばクライアントとの1:1のヒアリング>
一人わずか10分!という短い持ち時間をどう生かすか。
西田氏はクライアントの希望を聞き出すため対話を心掛け、新居に持っていきたい家具について、
「そういえばリビングのテーブルは妻のお気に入りで…あれはぜひ」
という具体的な情報まで短時間で引きだしていた。
かたや谷尻氏は、やおらPCを取り出し己の過去の作品をつらつらと見せながら、自分の中からあふれてくる建築へのポリシーなどを開陳してみせる。一方的な説諭のようでいて、実は沢村氏の反応から共感や非共感などを感覚的に読み取っていたのかもしれない。<建築用地の実見>
実際に建てる前提ではないが、より提案イメージをより具体的に起させるため番組では実在する都内100坪のある土地を指定していた。
西田氏は助手を連れまっさきに現地を訪れる。そしてその日から事務所で検討を開始し、早い段階でプランのたたき台を作りあげてしまう。そこからもこつこつとスクラップアンドビルドを延々と、一人思索に浸り、模型と対話すること小一時間。
「(ずっと模型をみていたのは)沢村さんやご家族と対話していたんです。妄想ですけどね(笑)。だいぶ見えてきました」
ほう。可能な限りクライアントの気持ちに寄り添ってみる誠実さに打たれる。机に向い課題にコツコツ対峙するその姿はスタジオの傍聴者から、執筆に苦悩する文豪になぞられていた。
谷尻氏は…なぜか何もしていない。どこかで講演をしていたり、notTVのエンダンに出演していたりと超多忙。普段の活動拠点は東京にあるが、事務所は広島という彼が事務所のスタッフと合流したのは、1週間ほどしてから。しかしなぜか川でバーベキューしたり遊んでばかりで…大丈夫か?と不安になった番組スタッフに、
「まだ全然降ってこないので。今はいろんな星をちりばめておいて、最後にぱっと星座になるのを待っているんです。最初に固めてしまうとそれに縛られてしまう」
自由かつ天才肌な人なのだなぁ。土地の実見も西田氏に遅れること10日。3週間しかないというのに。<作品完成>
異なるアプローチによって完成したとはいえプランはどちらも、素敵だし奇抜だしカッコいいしスゴイしワクワクさせるという点では共通していた。双方の模型に食らいつくクライアント。
「ここで子供たちが遊んで。僕がここにいて」
いずれ甲乙つけがたい、つけるのは好みの問題。ただどちらも実際に住むとしたら、いろんな意味でエネルギーがいりそうだよなとアタシは思ったけれど(笑)
番組は、建築家に対するリスペクトを感じられる真摯なつくり、画面の静かさと品はまるでNHKを思わせる。なのにフジテレビというアンビバレント
建築家ってのは、言ってみれば数学の得意なアーティストなのだな。
「『住みやすい家』より『住みたい』家を」
と谷尻氏。
ジャーナリストの青野氏は、
「お二人の(作業に)かけている時間がすごく違うように見えていましたが、考えていた時間はたぶん同じぐらいだと思います」
深いね。特番だが次回があることを期待。
*1

*1:※記憶をひねり出して書いてるので、細かいニュアンスとか情報が違うところがありますことをあらかじめお断りしておきます