本日のよろこびごと。(567)


医者として 誠実であるって なんだろう(喜)
ドラマ初回の感想〜♪

誠実に作ろうとしているし、誠実に演じてるなぁという印象。悪くはない。悪くはないが良くもない…なんか惜しいんだよね。役者はホントにがんばってたんで、脚本が腑に落ちなかったせいかな。主人公が正義の独断へ突き進むためだけの一本線、その先にあるゴールの独断行動と結果(詳細は後述)が誘因するなんともいえない気持ちの悪さ。これらによって誠実さが相殺されちまってましたね。
舞台は大学病院。
異分子的主人公が古い院内体質に反抗し、徐々に周囲を巻きこんで病院全体を変えていく系のドラマはアリガチで、なにか壊しがないともはや贅沢な視聴者は退屈に感じるだろう。本作における壊しは、主人公が“37歳の研修医”であるという設定。へー、37歳でねぇ。民間企業での社会人経験を経て門外漢な分野へ挑戦する恐怖と不安を想像できる世間知がありながら、英断を下せる人物。果たしてどんな波乱を起こしてくれるんだろうか? しかし残念ながら初回を見た限りにおいて“壊し”があまり機能していなかったように思う。
なぜだろう?
実年齢(37歳)の役というが、草なぎ剛氏は37にしては若々しくて小奇麗だ。会社で消耗され心折れた疲弊の蓄積がほとんど見受けられない。あまりにもひょうひょうとしている。いやま、それはそういう性格の人なのかもしれんが、とにかく単純に見た目ね。研修医仲間のガキっぽい男2名とはそれなりに対比がついていたものの、女性(水川あさみ)にフレッシュさがなくて、年齢差があまり効いてない。
転身動機の浅さ。
前職は超一流食品メーカー勤務、当時会社のために取引先を切り捨てたことに負い目を感じている。なぜあの時上司の言いなりになってしまったんだろうか、組織に迎合せず自己を貫ける強さがほしい、変わりたい、人生をやり直したい…と考えていた。さらに腎機能障害を患った婚約者(主人公が発病原因に関わっている含みあり)の専属医になりたいという直接的な事情が医者の道を選ばせたようである。
なるほど動機として感動的だし実際にもありそうだ。悪くはない。だがドラマを見慣れたアタシのようなやっかいな視聴者は、机上で創作されたような浅さを勝手にかぎとってしまう。例えば元広島カープにいたホプキンスはプロ野球選手を辞め帰国後に整形外科医になった。現実のほうがよほどドラマチックではないか。もう少し破天荒な設定であってもよかったのに。
でもま、いずれにせよ主人公はとても誠実な好人物である。先輩医師(田辺誠一)の、
『会社でも病院でも上司に逆らっては生きていけない』
という親身な忠告を無視してしまうほどに。点滴で栄養摂取している、胃ろう手術(術後は口から物を食べられなくなる)の決定した患者(北村総一朗)がいる。主人公は周囲の反対を無視して経口摂取可否のテストをと、彼にゼリーを食べさせてしまう。研修医という立場でカンファレンスをさぼり、誰の立ち会いもなく、誤えんによる肺炎を誘発し患者の命を危険にさらす可能性があるにもかかわらず!
彼の危険な行動を聞きつけた同僚医師らが慌てて病室に駆けつける。すると、ゼリーを食べることができた患者の喜びの表情と満足げな主人公に迎えられ、なんとなくなにも言えない感動的な空気になるのだが…えっ、えっ、ええっ?
彼の行動はいいことなの? 結果的に誤えんが起こらなかっただけで、結果がよければそれでいいの?
違和感はそれだけではない。そもそも途中まで彼は『患者さんが口から物を食べる喜びを失ってしまう辛さを』なんとかしてあげたいという患者本位で滅私な俺行動だった。少なくともそう見えていた。なのにラストシーンで
『僕は自分が変わりたかったんです』
えっ!? 自分のためだったのかよっ!? それなら患者に危険を肩代わりさせるばかりでなく、系列の違う別の病院でセカンドオピニオンをとか、テストをやるにしても昔なじみの婦長の協力を得て万全のバックアップ体制で臨むとかいう方向にはならんかったのか? なんかなー、誠実だと思っていた人物に裏切られて少しイヤな気分がしたよ、ツヨポン…。
今後の見どころは、松平健がイイやつなのかどえらい腹黒いやつなのかという謎と、悶着ありそうな患者の面々(甲本雅裕、でんでん)の活躍ぐらいだなぁ。でもまあ草なぎ君のドラマは尻上がりに良くなる傾向があるし、まだまだ見放すのは早いと思っております。