本日のよろこびごと。(509)


葬式は 遠くにあるよで 実は近い(喜)
またしてもドラマの感想〜。

設楽さん目当てで視聴したら、力の入った良作。ようやくプロの作ったドラマを見られたなぁという感じ。
主演・山下智久、ヒロイン・榮倉奈々、山P家族に反町隆史前田敦子、知念侑李、大野いと。主要キャストがやや弱めでラスト二人にいたってはアタシゃ聞いたことねぇ。なんつーか、やや軽め?と侮っていたらあにはからんや、その軽さを埋めるキーパーソン&ゲストが凄かった。実力派かつ大物で脇を固める固める、ぎゅうぎゅうに締める。山P父に蟹江敬三(初回で死亡かいっ!)、謎の男に山崎努(死神ポジ?)、自殺してしまう居酒屋店長に設楽統(大好きだー!←)、その母に、
「えっ、えっ、吉行和子さんっ!?」
老いを勲章とした役者というものがいるとするなら、山崎努はもちろんのこと、吉行和子もその勲章を持つ役者のひとりではなかろうか。今回の彼女の演技には魂を持っていかれた。引き連れてくる空気、情念のようなものを身にまとっておられる。声を荒げたり熱を出すことなく伝わる深い情(こころ)。魂(こん)が入ってる。
葬儀社の振りをしていた(嘘でもないが)山Pがご遺体とその母・吉行の前で、
『すみません、僕は嘘をついていました。仕事で彼を追い詰めていたのは僕です』
と白状し詫びた際の、一拍置いての
『知っていました』
う、う、うわぁ〜…深けぇ、こええぇ。母の業というものにガツンと後ろ首をねじふせられた瞬間でした。思い返せば霊安室で初めて顔を合わせた時にもわずかに関与を疑うそぶりがあったが
『井原…井原葬儀社のものです』
『ああ…』
の会話で納得して疑念を取り下げたものと。描かれない間に暗闘していたのだと、行間を読ませる演出の冴え。遺体の頭を撫で、
『痛いの痛いの飛んでけ〜…』
からラストの骨壺を抱いたシーンまでギュっと心臓を鷲掴みにされて。受け入れられずにいた設楽さんの死を、母・吉行の見送りの行(ぎょう)を見ているうちに、事実として受けとめられるようになっていく(いや、設楽さんは死んでないってば!)。なるほど葬式は
『遺族が泣けるようにしてあげる』
ものなのだね。
演出も脚本も秀逸。榮倉奈々の先日までのドラマと違う伸び伸びとした演技を見て、役者を生かすも殺すもスタッフ次第だと思う*1。このドラマの彼女はとても可愛らしかった。山Pはもともと若手では演技巧者なほうであるにもかかわらず、イケメンで器用なことが裏目にでて評価されずらい人。彼でこういうドラマを作ろうと言ってくれるスタッフに恵まれているということはちゃんと見てる人は見てくれてるんだなと安心する。
重いテーマをじっくりと描きたいがゆえのあえてのスローテンポと抑制と間に、昨今のせっかちで過剰なまでの説明を求める視聴者がどこまで付いてこれるのかわからない。映画『おくりびと』の成功を受けているとはいえ、映画とテレビの連続ドラマとでは勝手が違う。かなりの冒険作ではあるでしょう。少なくとも初回は良作であり、作り手の良心を感じさせる作品であったように思う。健闘してほしいもんです。なんて、エラそうにすんません。

*1:もちろん作風が違うからあっちのスタッフが悪かったというわけじゃないし、役者の適性もある