本日のよろこびごと。(456)


脳トレに ワンランク上の アミューズを(喜)
「5000円越えのランチ、年に2回ぐらいしてます! 5000円超えると味がかわると思う。中途半端に3000円ぐらいだと『高い割に…』になってしまうところが多い。5000円ランチにいきますか? 食欲減退する年になる前に是非!」
そう力説するブルジョア主婦Aさんに乗せられて行ってきちまいました。食ってきましたよ、おフレンチのおランチをっ!

  • タテルヨシノ銀座

服装について事前に「ジーンズはダメよ」と注意されていたのでいちおうそれなりに、ひさしぶりにアクセサリーなんかもしてちょっとウキウキ。
店舗は銀座三越裏のデザイナーっぽいビルの上階。ビルのガラス扉周りに看板もなければ、ひと気もなくて、超気取った外資オフィスビルのよう。ホントにここでいいのかしらん? よくよく見ると雨の当たる場所に4〜5個腰丈の石柱オブジェ、そのひとつの上面に“ty”のイニシャルが刻印されていた。お、奥ゆかしいにもほどがあるよ、入りずれぇ…。でもま、そこは何度か来たことがあるというAさんがいるので心強い。
12Fでエレベーターを降りるとワンフロアすべてタテルヨシノ。恭しくレセプションの女性に迎え入れられ、窓際の席へ。本日はわりと空いているのか、5割程度の来客。やはり女性二人というのが圧倒的に多い(つーか、男性客居たっけ?)。
接客の恭しさにしょっぱなからジョブをかまされやや気おくれするものの、ほどよい馴れ馴れしさを織り交ぜ「貴方はここに居てもよいのですよ」というコンファームをしてくれるあたり、“接客”というよりも“迎賓”というべき趣で、己のランクが一つ上がるようなふわふわした気分の良さを味わう。ううむ、これが高級店というものか。過去に来客した客の顔を記憶しているメートルとAさんの間で久しぶりの応えがあり、
「しばらくおいでになられませんでしたね」
「ええ、しばらく来てなかったです、ふふふ」
みたいな会話が。うはー、ははは(←心の乾いた笑い)。そーいうのに慣れていない自分はまたも居心地悪いが、こうした非日常を味わえるのも高級店ならではのイベントのひとつとして楽しむことに。
コースは前菜、メイン、デザートをそれぞれ複数の候補からチョイス。オススメなどを親切に教えてくれるのに流されながらも、たまに主張すべきは主張して料理を決める、軽めのお手合せ。ふうっ。
料理について詳しく書ければよいのだが、己の文才や語彙で表現するに余りあるので詳細はなしで印象のみを自分の言葉で伝えます。ご容赦を。
前菜の前に出てくるちょっとしたつまみをアミューズという。本来の意味のアミューズにも驚かされたが、そこはまだ序章にすぎない。その先の前菜、メイン、デザート、それに連なるあれこれへ進むすべてがアミューズアミューズアミューズ。メニューを見て「たぶんこんな感じかな?」を予測したすべてが、そのはるか上を軽く超えてくる。
盛りつけの妙は現代アートさながらで目でアミューズ、そして一口入れた途端に、それまで大いに弾んでいた会話は即時ぶった切られ、
「お。。。。おいしい。。。。」
「う。。。はぁあ。。。」
と、脳内が一瞬にして味覚への感嘆に占拠されてしまうアミューズ。しばらく放心した後に我に返って
「あ、何の話してたんだっけ」
「えーと、あ、そうそう、こないだのドラマの――」
と再開して再び盛り上がりかけたところで
「でね、そのときに…あ。。。うまぁ。。。」
美味しい料理は会話を止めるのだ。
隅々まで凄い。皿中央に盛られたメニューに書かれた肉や魚そのものが凄いのは想定内として、彩程度に周囲を飾るちょっとした細工的なものまでもが遺漏なくアミューズな味覚を提供し、それでいて一皿としての完成度が異様に高い。もうだめ、完敗。
デザートまで3時間かけてゆっくり堪能し、気持ちよさを味わえて5000円は安い。誘ってくれたAさんにいまさらながらひたすら感謝することしかできないアタシ。事前にAさんが言っていたことはすべて正しかったんだなぁ…というわけで以下にAさんの勧誘文を引用し本日の締めとさせていただきます。
「5000円超えると、多分食材が変わるんだと思うの。例えば銀座でフレンチとかイタリアンで3000〜3500円くらいのランチを食べる。コースだと、アミューズ+前菜+メイン+パン +デザート+コーヒーとかって感じかな。イタリアンだとパスタもついたりするよね。でも、銀座で普通にランチ+カフェでお茶ってパターンでも2000円以上かかってしまうことが多い。で、そう長々とはいられない。それに対してコースの店は出てくるのがゆっくりなので基本的に2時間以上長居してよし、私は4時間近くいたこともある。もちろん一般的なランチよりも品数が多い。お店の人もそりゃ親切でいい気分が味わえます。と考えると銀座なんかで普通にランチするのなら、フレンチとかのちょっと高級な店に行って長居するのが断然お得な気がしない?そう考えると3000円程度のコースでは大した食材が出てこないのは当たり前。だからシェフの腕が光るのかもしれないけど。美味しいモノを食べようと思ったら5000円越えは仕方ないのかな〜と思う」