本日のよろこびごと。(406)


銀ブラの 汗を流しに 金春湯(喜)
最近読んでおもろかった本を紹介するね。

旅と食にこだわり人一倍な趣味人さんによる銀ブラ(おもに裏通り)・エッセイです。
銀座は老舗の宝庫。とはいえ、いかにも由緒正しき路面店はしょっちゅう銀座に訪れていてもアタシのような一般人には敷居が高い。もちろん門戸が開かれたふうの店舗もあるにはあるけど、つい足はデパートに向いてしまいがち。で、デパートだけでくたびれて帰っていくのが常。
それにしても、バブルはとうにはじけ、若年富裕層の買い物場は六本木が主流と思われる昨今、銀座で決して安くない(と思われる)老舗が生きながらえていられるのが不思議な気がしていたら、本書を読んで納得。な〜るほど、嵐山氏のようなやや裕福な高等遊民のような人たちで支えられているんだったのね。どんな人らか。まず、値札を最初に見ない人。そこからして自分とは違うなぁ。帽子店に入れば、
「○○さんはボルサリーノですよ」
と覚えられ、うん、確かに僕はボルサリーノだな→あっさり帽子をお買い上げしちゃえる人。妙齢のご婦人に似合いそうなバックを誰に献上するか決める前にとりあえず買ってしまえる人。和光はカヌレだねといい、呉服屋でなんとなしの気分で浴衣をあつらえ、金春湯でひと汗流す。
ここがねー、金春湯ってとこが憎いんだよ。今はやりのこじゃれたスパなんかではなく、木札のついた下足入れ、九谷焼のタイル絵、身を寄せ合う湯船で、まさしく正統なるひとっ風呂を、そして懐食みちばで丹精込めた飯と冷酒…みたいな。あー、憎いぜぇー!
嵐山さんはお金持ち、だからこそできる贅沢という側面はある。でも裕福じゃなくてもできる、拾いマネしたくなるポイントが多々あんのよ。
例えば、ルートからわりかしリーズナブルに実現可能なのを拾って組み立て直すと、
<懐食みちばで一席(ただしランチ)〜和光でカヌレ、くのやで手拭い、銀座夏野で箸置きを買い〜金春湯でひと汗流し〜カフェランブルでブレンドを>
とかね。猛暑じゃなければ本書に倣った大人な銀ブラをしてみたくなること請け合い。暑いからこそ逆には桃花源で担担麺で豪快に汗をかくランチにしてもいいかなぁ、なんて、拾いマネしたくなるポイントはたくさん。
銀座って、三越や、エルメス、シャネル、フォーエバー21などの目映さばかりじゃなくて、ちゃんと銀座が銀座たるゆえんは裏通りにこそ長々と息づいているんだなということが改めてわかるし、光三郎氏という甘党にも辛党にも優しい最高のガイドさんつきで極上の銀ブラに行った気にもなれる、一読一旅の楽しさ。