地震のこと(9)


再び小学校にて待機。暗くなった頃、非常食の乾パンが配られた。大人3枚、子供は2枚、それとウェットティッシュが1枚ずつ。はじめて食べた乾パンはモソモソして口の中の水分を奪って…マズい。
8時過ぎ、正式な避難所である中学校への再避難を促される。もちろん追い出すわけではないから留まりたければ留まっても構わないと言ってくれているが、物資などもそちらに優先的に届くだろうしとすぐに移動を決めた。
中学校は隣接しており、徒歩5分。
校舎に導かれるとまず明るい1階のホールで名簿への記載を求められた。氏名、住所、電話番号。記入を終えた人に1人1枚ずつ、銀色の外袋をむかれたばかりのオレンジ色の毛布が供与される。
2階〜4階の教室が避難所として使われており、すでに100人以上が身を寄せていた。
津波の恐れがあるので最上階にしましょう」
比較的人が少なくテレビのある部屋を選んで教室後方の椅子に固まって座る。地震のニュースを聞き続けるのは精神的にきついが、今は気を休めることよりも情報のないほうが不安が募る。
疲れたな…。
教室の前のほうでは顔なじみらしい母子ら十数人が寄り集まって集団を形成し、机を脇へよせ、床に直接毛布を敷いた上で車座になってくつろぎはじめた。しばらくは椅子に腰を下ろしていた私たちも真似をして、毛布を敷いて床に足を伸ばしてみたらかなり楽になった。
飲み水は、廊下にコック付ポリ容器に入った飲み水とコップが用意され、トイレは小学校と同じやり方で使用可。
「そういえば…」
巻き込まれたヒロインが首から下げた真新しい銀色のレスキューホイッスルを指でつまんで見せた。
「これ、ついこないだ買ったばかりなんです」
「え、防災グッズを? すごい」
「NZの地震をみていたらあったほうがいいかなって。なにかあったら全力で鳴らしますから」
「お願いします!」
NZの地震ニュースを見ていたとき、自分もAmazonなどで防災関連グッズ(LEDランタン、寝袋、テントなど)を物色したが買うまでには至らなかった。*1

*1:地震から2週間後、かつて買いそびれたLEDランタンに10倍の値がつけられて売られているのをAmazonで発見。あさましい。