地震のこと(8)


1時間ほどして少し気持ちが落ち着いてきた頃、当座の食料などを調達するため心配性ママと買い出しに出ることにした。
最初に目指した公民館近くのセブンイレブンは、地上と同じ高さの店舗が液状化の影響で沈下して店内に泥が流れ込み、シャッターを下ろしていた。*1
次に向かったのは、5分ほど歩いた先にあるファミリーマート
「よかったここは開いてます」
正面のステップとポーチにいくらか破壊が及んでいたものの店内には明かりが灯り、殺到というほどではない程度の大人数が詰めかけていた。
水、パン類はすでに品切れ、残りわずかなお茶やカップ麺が次々とかごへ投入されてゆく。あわててお茶とジュース数本、飴やクッキーを確保して長いレジ待ち行列の最後尾についた。遅々と進まない列でも並ぶ人々は粛然としたものだ。買い物かごが前のひとにぶつかれば、
「すみません」
「いえ、こちらこそ」
という客同士の声掛けがある。また、等しく被災者であるはずの店員さんも、
「大丈夫ですか。持てますか? 気を付けてお帰りください。ありがとうございました」
送り出す一つ一つの言葉が暖かい。
帰る途中で自宅へ立ち寄り、夜を過ごすための防寒具などを携えて避難所へ戻った。この帰宅時に隣人との情報交換で知ったマンションの現況は、電気・ガスがOK、水道・電話はNG、テレビもBSなら映るとのことだった。意外と軽傷かもしれない。構造的損傷の多寡を素人なりに判定し自宅に留まる判断をした人も多いようで、ポツポツと部屋の明かりが点灯していた。
地表さえ視界にいれなければ何ら変わりないいつもの夕方の風景、ただ少しばかり明かりが少ない。

*1:2週間以上たってもこの店舗は閉鎖されたまま