地震のこと(6)


ラジオ情報を追いかけるように頭上のスピーカーから、
「ただいま津波警報がでています。高台か、高い建物に避難してください」
と市役所の緊急防災放送が。
ここへも津波がくるって?
自宅へ戻るか避難所を目指すか。予告された津波がどれほどの威力があるものなのか明確な指針も知識もないが、判断の遅れが命取りになるという映画でのシミュレーションだけは豊富だった。
婦警さんの、
「学校が指定避難所になっているようです」
というヒントをつてに、相談して学校施設へひとまず身を寄せることを決めた。
都内から仕事で訪れ偶々被災した女性もいつの間にか仲間に加わって、以下、心配性ママ、その息子、巻き込まれたヒロイン、そして私、総勢4人の道行となった。
内房にも津波警報がでています。予想される潮位は4メートル」
不吉な警告を繰り返すラジオのスイッチをいったん切る。泥水に阻まれ、やむなく歩道から車道に降りたりしながら1列になって進む。車は徐行している。長い間地下に閉じ込められていた泥から、わずかにヘドロ臭が漂っている。
息子さんはちょうど昼寝をしていた最中とかで、寝巻姿に枕を抱えているコミカルな恰好。漫画に出てくる人みたいだねと少し笑う。
避難先である小学校へ向かう途中、エリアにより液状化の発生具合に大きな差があることに戸惑いを隠せない。
アスファルトのひび割れや、部分的な泥水の流出はあるものの、
「この辺はほとんど被害がないですね」
「うちのあたりが一番ひどかったんでしょうか…」
なんとなくやりきれない。