地震のこと(2)


3月11日14時46分、
「あれ、地震だ? ちょっと大きいな」
そのときちょうどこのブログの更新中で、昼飯のスタミナ丼が激ウマであったというような内容を書き終え、今にも更新しようとしていた矢先、
まず横揺れからはじまり、
「ああ、またいつもの…」
と最初だけは悠揚と構えていた。
ただいつもと違うのは揺れが10秒経っても収まらないこと、いや、収まらないどころかどんどん大きくなっていく? まるで船に乗っているような大きな揺さぶりが次第に強くなって、立っていることはできる。座っていることもできる。でも…。
そろそろ止まるかな、止まってよ…え、なんで? なんで止まんないの?
これはもしかして…ついに?
始末する火はない。あ、そうだ、玄関のドアを開けておかないと出られなくなるっていうよね。
そう思いつき玄関へ向かう。自分ではしごく冷静なつもり。
それにしてもこの揺れは尋常じゃない。もしかしたらマンションが倒壊するかもしれない。ふいに湧きだした恐怖に脳がカッと熱くなり、やもたてもたまらず靴をつっかけ階段を降り外へと脱出した。これは本当は絶対やってはいけないこと。室内で揺れが収まるのを待つべきなんだよね。でも怖くて、怖くて。
すでに1分は経過している。まだ揺れは収まらない。
外階段を駆け下りるとき脳裏に浮かんでいたのは、パニック映画などで自分の真後ろの階段が崩れ落ちて間一髪助かるというようなシーン。自分は主人公じゃないから間一髪で助からないパターンかもしれないと怯えながらも、実際の階段にはなんの損傷もなく無事外へ。
振り仰ぐと、たった今降りてきた自宅マンションが巨体を大きく右へ左へ“揺れる”というよりも、土台が動くのにつられて左右へ横滑りを繰り返していたという感じ。マンションとマンションの間から、道路をはさんだ斜向かいのビルが見えるのだけれど、これがさらにリアリティを失うほど大きく滑らかに横滑りし、まるでワルツを踊っているようだった。目視で1メートル左右に移動を繰り返していたようなイメージ。前景と後景の地面のつながりがなくなり、それぞれが逆方向へ動いているために増幅して見えたのだと思う。
現実感を喪失したまま茫然と眼前の光景を眺めていることしかできない。と、ふいに足元のタイルが割れて盛り上がり、あわててアスファルトの上へと退避すると、今度は視界の左方向の地面から水が吹き出しはじめた。水道管が割れた?
体感では10分ぐらいと長く感じた揺れは2分ほどだったらしいと後で知った。ようやく最初の揺れが収まった。まだ現実感がないため心臓は意外と平静を保っているようで、足だけがガクガク。
あれだけのことがあったのに、そのとき外にでてきていたのは自分ひとり。揺れが収まって一人、二人と住人が顔を出す。地面はあちこちで波打ち、波打った割れ目から水交じりの灰色の砂が噴出を始めていた。液状化だった。
頬に水滴が当たって空を見上げる。薄く黒い雲。
「あ、雨だ…」
地震の直後、にわか雨が降り始めた。