本日のよろこびごと。(272)

『白夜行』


寒さより 女優の覚悟に 身震いす(喜)
映画の感想。

2011年日本、監督・脚本:深作栄洋、原作:東野圭吾、出演:堀北真希高良健吾船越栄一郎姜暢雄緑友利恵、栗田麗、今井悠貴、福本史織、斉藤歩、中村久美、田中哲司戸田恵子
昭和55年の質屋店主殺人事件で、容疑者の娘、被害者の息子となった小学生のふたり。彼らのもつれた糸が紡いだ壮絶なその後19年を、サスペンスタッチで解き明かす、東野圭吾原作の“鬱”ミステリーの完全映画化
すんません。完全になめてました。
見る前は、
堀北真希は暗めな役が似合いそうなので楽しみっ♪」
程度の軽さ。好きな女優さんだけれども、暗くて押しの弱いイメージだし童顔だし、フェードアウトしていいお嫁さんになっちゃうんだろうななどと、ホントにホントに見損なっておりました。
だってだって、
「なにこれ、かなり傑作じゃねぇー!?」
堀北真希、ヤバすぎ…」
掘北演じる雪穂は美しく穏やかで清らか、それでいて凄みやエロスあり。終始抑えた演技、控えめな発声で、そしてときどき零れる艶。往年の映画女優の香りと貫禄。はー、こんなに才能あふれる人やったんや〜。
今後同じ役を多くの女優がやりたがり、監督も撮りたがり、映像化が実現するにせよ(確実にすると思う)、
「よかったけど、やっぱ掘北のが…」
と語られちまう。例えて言うなら、『疑惑』の桃井かおり
でも堀北自身もこれからがこわかろう。
「よかったけど、『白夜行』のときのが…」
の宿命を負っちまったね。
さて、堀北を光とするなら、影を演じた高良健吾もメガヒット。あの若さであの色気、彼もかなりうまい、かなりヤバい。
そして船越栄一郎、2時間ドラマの帝王とホメ殺され逆に見る目を曇らせていた俳優。彼もまた新境地を見せておりました。被疑者死亡で終わった殺人事件の謎を19年間、定年後も追い続けた老練な刑事を臭みなく演じ、よき語り部であるばかりでなく、よき当事者ともなっており。
サスペンスの謎解きも、秀逸。謎を解く鍵が適度な場所、適度な時間軸に置かれ、無理がない。さらに2時間半の長丁場、途中でだれることはなかったものの、
「こんなシーンはもういいからさ、もっと雪穂をみせてよ」
そーいう知ったかぶりな浅薄さをラストにグサッと突きやがる、監督の手管。なにげない刑事の愚痴、子供に優しく声かけするジジイ、不自然に動揺する男などなど、数え上げればきりのないピースが、オセロの駒が白から黒へ裏返るようにカタカタと意味を持って浮上するラスト。ちくしょう、やられた。2度3度見返す価値あり。
あーあ、なんか長々と書いちゃったなぁ。はい、アタシし興奮してますですよ。いまんとこ、これが今年の最高傑作だもの。みつを。