豚インフル対策のマスク買った?(2)


本日WHOの基準がフェーズ5に引き上げされた。昼間でかけたホームセンターでは、店員さんが入り口近くに大慌てでマスクおよび関連品コーナーを作っていて、それを横目に「ふーん」と素通りした。
夜8時過ぎ、テレビに『成田で1人豚インフルエンザの陽性を確認』とのテロップがでる。心臓がドクン、
「へー、こりゃたいへんなのかも、もしかして日本上陸か、そうか、そうよね、きっと。ってことは、すぐにパンデミックが来るの! ええっ、来るのっ、どうなのっ!? 来ちゃうのーーーっ、うわー、やば、やばいっ」
5分後には、財布の中に5千円札があるのを確認して、近所のスーパー内ドラッグストアへマスクを求めて飛び出していた。
スーパーに着く。しかし、マスクがぶらさがっていたらしきコーナーに商品はない。同じようにマスクを買い求めに来ていた主婦がお店の人と話しているのを盗み聞く、
「今日あっという間に売り切れちゃったんですよ。明日入荷する予定ですが、どこもかしこも品切れになっているので本当に入ってくるかどうか」
がーん。もはや躊躇していられない。駅前ならっ、駅前ならばっっ、ドラッグストアが大小あわせて3軒はあるのできっと少しは残っているわ!と、15分の暗い道のりをはやる気持ちを抑えきれずに早足で急ぐ。
「しかし! な、ないっ! ここにもっ、ナイっ! うわわ、なんでー!!」
まさかこんなことになっているとは。ようやく己の出遅れを悟る。
「…そ、そうだ、つ、通販ならまだあるかも」
早足で帰宅して、すぐにAmazonでマスクを検索、間髪いれずにポチってかごへ入れお会計へとなだれ込んだが、
「ええっ、売り切れっ!?」
まさか会計にまですすんでいる段階で「買えません」と言われることがあるとはっ。
「うわーうわー、どうしよーーーぉ! そそそ、そうだ、明日、朝一でホームセンターへ行こうっ!」
かくして手元にマスクはなく、今日中に打てる手も果てた。悄然としたアタシは、NHK豚インフルエンザ関連のニュースをみながら、マスクのない人生を想像して呆けるしかないのだった。
そこは自宅から一歩でると、歩行者はほとんどがマスクをしている世界だ。スーパーへ行っても電車に乗っても周囲はマスクだらけで、マスクをしていない人(=アタシ)は哀れと嫌悪の目線を向けられる。さらに少し咳払いでもしようものなら、ささっと道が空けられてしまうに違いない…ああ、悲しい。
と、このころになってようやく自分がパニックになっていたことに気づいた。たぶんネットやTVで懸命に情報を仕入れようとしているうちに水面下で恐怖に侵食されていて、8時のテロップが引き金になったのだ。
パニックから覚めても、マスクがこのまま手に入らなかったらどうしようという不安は残る。でもマスクがないと死ぬわけでもあるまい。そもそも豚インフルエンザの毒性はさほど高くないのだから、罹患しても軽めの症状で終わって免疫だけ獲得してメデタシメデタシとなる可能性の高くないか? 高いぞ。アタシ、ちょっとあわてすぎ、てへへ。と冷静になってきたけれど、でもちょっと心臓がどきどきしてる。無理してる。きっとまた明日、ホームセンターでマスクが買えなかったら、また小パニックになるんだろうなあ。しょうがないなあ、アタシ。