『エリザベス ゴールデン・エイジ』

重厚で濃密。これぞ映画、ええもん見せてもらいましたという感じ。
ヨーロッパには16世紀の建物なんてふつーに残っているからいいよね、ロケ場所に困らんで。歴史的建造物の中を重厚な衣装をまとった淑女がわらわら行き交うだけでも豪華絢爛でわくわくする。さらにケイト・ブランシェットの貫禄演技ときたもんだ、
「こんなに凄い映像なら映画館で見ればよかった〜」
歴史コスチュームものは日常離脱感が楽しい。航海士ローリーとの逢瀬で侍女ベスが装束の紐をほどいて胸をご開帳するところなぞは、生唾もんです。もっと奥まで見せろーと思う、その寸止めがまた心地よい。
ところで、なんでエリザベスだけあんなふうにひときわ異形なファッションなのだろう。白塗りに変なカツラ、明らかに周囲の女性たちと違う。女王の権威を目に見える形にしていたのか、あるいは巫女的な儀式的なもの? 自分には歴史の素養がないんでわかりません。
歴史オンチにはメアリー・スチュワートの存在の意味もいまいちよくわからん。で、映画を一時停止してWikiで調べる、な〜んて映画館でみてたらアウトよね。これは自宅鑑賞でよかった点だわ。彼女を処刑したことがスペイン王フェリペにイギリス侵攻の口実を与えたが、処刑せざるをえなくなるようにフェリペが裏で画策していたという筋立ては、歴史背景を理解してこそ面白いのだ。エリザベスの腹心が忠実であるがゆえにその罠にはまってしまったという皮肉も。
終盤のスペイン無敵艦隊との海戦。結果は有名なのでいくらアタシでも覚えていたが、映像で見る戦いぶりは想像と違ってなんだかとっても原始的だね。船にタールをまいて火をつけて特攻する戦法、これは三国志赤壁の戦いと同じ。あちらは3世紀、こちらは16世紀。1000年以上の時を経ても戦法は変わらんのだなぁ。
エリザベスの晩年も同じスタッフで見たくなりました。監督さんがインド系というのも興味深い。