NHK-SP『プーチンのロシア』第4回

  • プーチンの子どもたち〜復活する"軍事大国"

1994年のチェチェン侵攻で士気の低さと装備の古さからくる軍の衰退振りを露呈したロシア軍。その結果、ロシア国内で軍への不信感が高まり、外部からはNATOの勢力拡大がじわじわとロシアを圧迫しつつあった。そんな時代をうけて2000年大統領へ就任したプーチンは強国復活を望み、就任直後に愛国プログラム2001による愛国心の重視と、カデット(軍の幹部候補生養成校)の設立に着手した。カデットで学ぶ少年・少女は12歳の入学初年度からAK47自動小銃)に親しみ、愛国心にあふれた軍人へと成長していくことを期待される。

  • カデットの2人の少年

軍人を両親に持つ少年はグルジア紛争に従軍した父親を誇りとし、国のために生きることへ揺らぎない信念を持って、卒業後は軍の大学への進学を希望する。
一方その親友はインターネットで軍のあり方を告発する情報などを知り軍隊への想いを反転させていく。生活の安定した軍人になってほしいと願う母親に諭されるが、
「国のためでなく自分のために生きたい」
と己の変節を親友と学校へ告げる。
プーチンの子ども」にならないことを選択する少年がいることに少しだけ安堵したけれど、こんなに内部にまで取材を受け入れたロシア側の思惑がちと気になる。「俺たちは本気だ。逆らうな」という示威のようでもあり。

  • ロシアの幸福

モスクワの市街地で愛国者らに襲撃された非ロシア系の死者が去年1年間に98人を数え、愛国心の行き過ぎを懸念する人もいる。
愛国心の象徴として脚光をあびることになったコサック。その出身であるカデットの校長は、生徒たちにオバマ大統領の就任演説を見せた後、
アメリカにはアメリカの幸福があるというのなら、ロシアにはロシアの幸福がある。その追求をする権利がある」
と言った。まるで、「お前はお前、俺は俺。好きにやらせてもらうから口出しするな」と喧嘩を売っているように。
ドキュメンタリーはここでロシアを訪問したときのヒラリー米国務長官の様子を映す。核軍縮のためのリセットボタンを我々と一緒に押しましょう、と笑顔でロシアの代表と戯れる彼女の姿がなんだかムナシイ。
軍人の道を選んだ先ほどの少年は、弾道ミサイルの軌道計算のために三角関数を学び、
「世界は再び2大国が対立する時代になった。アメリカがリーダーになりたいだろうが、ロシアがそれを超える」
と誇らしげだ。
経済危機の中でも軍事費を増加させるプーチン。彼の理想とする"全員が志願兵の精鋭ロシア軍"、蘇った軍事パレードに軍靴の音が響く。
ゴルバチョフエリツィンという流れを引き継いだプーチンは綱紀粛正という時代の揺り返しなのだろうけど、それにしても怖いなぁ。持った鉄砲は使いたくてたまらなくなるでしょう。その銃口は次にどこへ向けるつもりかと。なんだかなぁ、ロシアといい北朝鮮といい、日本はなんて因果な国の近くに位置しているんだろう。日本列島に帆を掛けてと太平洋へ船出していきたい気分になってしまった。