NHK特集ドラマ『お買い物』

  • 2009年2月14日NHK総合9:00〜10:13、作:前田司郎、出演:久米明渡辺美佐子市川実日子
  • あらすじ:福島の老夫婦が渋谷まではるばる中古カメラを買いに行き、一人暮らしの孫の部屋にお泊りする話

うわ、なにこれ、なにこれ。おもしれー!! んで、胸がきゅーんとしちゃったよぉ。
上質なドラマってこういうのを言うんだね。映画のようでもあり、一編の詩のようでもあり。NHKってときどきこーいうホームランぶちかましてくれちゃうから、まいるわ。なんだか、よそのドラマとは次元が違う。CMがないから余計にのめりこむにしてもだよ、1行で書けちゃうあらすじなのに、まるっきりぜんぜんつまらなくならないって、すごくないですか?
くどくど書いてこの豊かな余韻を失いたくないけれど、記憶に残ったキラキラを少しばかり記録しとく。後で思い出せるように。

  • 汽車(電車)の中でおもむろにひろげた重箱は、特別なお出かけの懐かしい風景。個室をふんぱつしているのに、駅弁を買うのではなくお弁当を持参するちぐはぐな堅実さ。
  • JRの自動改札の前で、「あれはオサイフケイタイっていうんだ」おじいちゃんは知ってたことを自慢げに。「それってなに?」「つまり、お財布の、携帯だ」
  • スタバっぽいカフェでサイズを聞かれ、「(大きさは)ふつうのを」。とまどう店員さん。後ろに並んでいる若い衆の、まだかよ早くしろよの圧力なんてなんのその。
  • 「疲れちゃったー。なんかおいしい東京のものを飲みたいのっ」。ちょっと前にそうダダをこねてたおばあちゃんは、メニューの字が読みづらいので絵を指差して注文。「アイスキャラメルスムージーですね?」「え?」「これ、ですね(ゆびさす店員)」「そう、そう」。なんとなく東京っぽいものを注文できよかったね。と思ったら、うわ、スムージーがストローで吸えなくて、死にそう…うわぁ無理せんでー。

ただ飲み物を注文して飲んでいるだけなんだけど、なんでこんなにおもしろいんだ? いやいや、決してお年寄りをバカにしておもしろがっているわけじゃないんです。キリマンもブルマンも置いてないでカフェって良く考えるとヘン。

  • 中古カメラに触れる前にズボンで手をぬぐうおじいちゃん。買うかどうしようか…、ばあちゃんは待ちくたびれてベンチでおねむ。買おうかどうしようか…「やっぱ止めとく」とぼとぼ。あれ、買わないの? そして場面が変わると、おっ、買ったんだー。嬉しそー、よかったねー!

足がおぼつかないのに渋谷まで頑張って遠出することにしたのは、中古カメラが欲しいから。昔持ってたカメラとおんなじようなやつを。アタシの母は「死ぬだけなんだから、もう物は買いません! あるものだけで暮らします!!」とたまに言う。欲しがることは、悪徳じゃないんだからもっと欲しがってくれと願う。まあ、母もあんなこといいよるくせに「しまむらでジャケット買っちゃった〜」とかなんとか、アタシより頻繁に物を買い足してたりするんだけど。

  • 孫むすめのアパートにお泊りすることになった二人。孫と、やたらラザニアにこだわりがあるおばあちゃんの会話。「おばあちゃん、ラザニア、好きなの?」「べつにぃ〜」「え、だって今作ってるよぉ!」
  • 何度聞いても“ラザニア”が覚えられない、おじいちゃんだけども、マンゴーは知ってるって? ほんとにー?「本当は知らないの。知ってるふりよ」
  • 足になにか挟まないと眠れないって、そりゃまたなんで?「怖い夢みちゃうんだぁ」。挟むための余分の布団がなくて、わんこのぬいぐるみを挟んだおじいちゃんの寝姿を指差して、「なんだかそうしてるとヘンタイみたい〜(笑)」「ホント〜」孫とおばあちゃん、大笑い。

孫の、過保護すぎないぶっきらぼうな応対から、よい関係なのがすごく伝わってきた。途中でドラマを見てるんだか、遠い親戚のじいちゃんばあちゃんをみてるんだかわからなくなっちゃった。どこにでもありそうな会話ばかりだし。両親に似てるトコ、似てないトコをみつけたり。
そして終幕は、なんとも愛しいスナップ写真なのでした。やっぱそうくるか。うん、そうこないとね。
NHK、ぶらぼ。