『警官の血』(4)


2代目民雄編では、光の使い方がいちいち技巧派で印象的でしたねー。
さて、ラストいくぞ!

  • 3代目安城和也(伊藤英明)、恋人(栗山千明):内通者として上司である加賀谷警部の暴力団との癒着をさぐるうち、その辣腕ぶりに傾倒していくが、恋人を寝取られたことで見切り、女もろとも摘発する。加賀谷の地場を継ぐようにして暴対捜査官となり5年、今度は自らが不法捜査の疑いで内部調査対象になっていた。進退窮まった和也は早瀬を訪問、男娼連続殺人、祖父・清二殺し、父・民雄の犯人隠匿に関する供述を得る。この録音をネタに上層部を揺さぶり、己への疑いを不問とさせ刑事の現場に復帰を果たす。

実は3代目の話はあんまり乗れなくて途中で目を離したりしてました。だから一部ストーリーわからなくなってるとこがあるんだよね。例えば加賀谷がなんの罪で摘発されたのかとか、ま、大筋に関係はないと思うんで。
伊藤英明は、恋人を寝取られた事実を突き止めた直後の表情がよかったね。まさかあそこでフッと笑うとは、ブラックだ。父親のDVを見て育った男は人間なんてもんにさほど期待しちゃいないんだろう。だから「やっぱりな」のフッ。祖父や父親の実直さとは対照的な、まず屈折ありきの和也。しかし捜査に利用したホステス(寺島しのぶ)の存在が彼を少しだけ変える。
さて、祖父を殺し、父を陥れた早瀬とついに対決をするのだが、このとき既に早瀬は80歳を超え車椅子に頼る老いぼれである。老人となった早瀬を椎名桔平が特殊メイクで演じるところも見所で…って、見所にはなってないよねぇ。たとえどんなに芝居で気張ったところで、無理がありすぎます。2夜連続で見続けたドラマのクライマックスだというのに、些細な綻びを見つけては「そこ、老人とちゃうやろ!」と穿り返す、そんな意地悪な視聴者にアタシをさせんでほしかった。
1部、2部までをキッペイで、平成編は年輪の臭気が姿形から滲み出るような老優にやらせれば、
「俺が謝らんぞ! 俺だって自分を人殺しにしたやつらから謝罪されたことはない!」
とぶるぶる震えて切れられても、こんな死にそうなジジイを責めても仕方がない、と諦められたかもしれん。戦争はいけないよね…でも責任転嫁すんなよ、クソジジイ!、と憐れめたかもしれん。惜しまれる。
結局のところ和也は早瀬の罪を暴き、償わせることはしていない、そこもすっきりしないところだ。そもそも和也は自分が追い詰められなければ、早瀬の所へ行こうとしていなかった。自己防衛という動機でしか動いていないように見える。上層部との交渉においては、早瀬の殺人罪ではなく、父・民雄の不法行為(殺人者をかばい証拠隠滅を図った)のが有力な取引材料だったし。そりゃまあ殺人罪の証拠はないし、あったとしてもとっくの昔に時効だし、いまさら罪を問いようもないのだろうが、これじゃすっきりしないよー。
交渉の席で和也はうそぶく、
「正義と悪をはかりにかけて多少の悪は仕方ないと父の時に判断したように、その理屈を僕にも適用してください」
つまりは、「正義のために悪は仕方ない」ってことが「警官の血」の答えなのか? そして3代かけて安城家はようやく、正義と悪の狭間における矛盾の解決をみつけたということになるんだろうか。そんなブラックな結論されて、警察から文句がこないのかしらん。「正義のために多少の悪は」とは思うけど、やっぱり建前というものがあるでしょう。
戦後や昭和30年代の物語にはノスタルジーを喚起させられても、平成にはまだそんな思い入れがない。それを差し引いてもなんとなく失速した感は否めない第3部。それでもSPテレビドラマとしてこの「警官の血」は素晴らしかった。これからもテレビ朝日のSPドラマに期待します。
以上、おわり。書き疲れたよ〜。