SPドラマ『疑惑』

意外なほどにかなり面白かった〜。
『疑惑』と言えばやはり桃井かおり岩下志麻の映画が金字塔でしょう。桃井かおりはふてぶてしさと退廃を漂わせた問題児タイプ、かたや沢口靖子は40歳すぎても青臭さが消えない優等生タイプ。沢口に球磨子は無理だろうと見る気にはならず、9時から裏の『誰も守れない』にチャンネルを合わせて『疑惑』前半を見逃す。10時すぎに『疑惑』に切り替えてから後は最後までこちらに集中、そして、
「ああ、面白かったー。最初からこっち見とればよかったー」
まったく、見るまでわからんもんだねぇ。
沢口版がよかった理由は、こういうことかと。リメイクで桃井の延長線上にいる女優にやらせてみたところでマネはできても越えることはできない。そこでまったく別方向のベクトルを加えて(つまり沢口靖子というベクトル)新しい球磨子像を創出する。考えてみればしごくまっとな戦略だ。もっともそういえるのは成功と感じているが故の結果論で、さらに言うなら沢口靖子が期待以上の出来だったということなんだろう。桃井球磨子は桃井にしかできない、そして180度違う沢口球磨子像は桃井にはできないってことを、見る前にいくら説明されたところで桃井版を絶賛していたアタシが納得したかと言うと…うーん。
さて弁護士役について。志麻姉さん演じたところを田村正和、性別も違えば役作りもまるで違う。志麻弁護士が怜悧と対決の人であるのに対し、田村弁護士は誠意と友愛の人でした。最初のうちは田村さんの声が出ていない(聞き取りづらい)のが気になってそれは最後まで引きずってしまったが、最終弁論で彼が、
「球磨子は…(はーはー)福太郎を…(ぜーはー)愛していたのであります(ふうっ)」
と行き絶え絶えに宣することで、球磨子の哀しみがよりいっそう強調される効果があったようにとプラス思考(ま、狙ってなかったろうけど)。これまた結果論だが田村弁護士は彼にしかできない…以下同文。あ、これだけは追記、古畑っぽく推理してるトコはちょっとなんだかなー。
他に特筆すべきは、室井滋演じる週刊誌記者ね。球磨子を鬼球磨とニックネームし週刊誌でネガティブキャンペーンを煽るゲス女、同記者を映画版で誰がやったのか残念ながら記憶なし。球磨子よりも室井記者のが一貫して「こいつが一番悪女じゃん」と視聴者の憎しみを一身に受けるってのはどうなのかしらん? まあ、ほんっとーに嫌な女だったんで最後は「ざまーみろ」と溜飲下がったんでよいのかな。んなとこも含めて、いわゆる勧善懲悪っぽいので平成版『疑惑』のがすっきりするし、見終わった心安らか。
ひさびさに桃井&岩下版をまた見直したくなりましたねぇ。