『県庁の星』


県庁上級職のエリート青年が民間企業研修で出向したスーパーで起こす、反発、融和、再生のハートフル・コメディ。
本、面白かったー。
んで、映画も借りてきてみてしまいました。
本を先に読んで気に入り、そのあとで映画をみると、映画的演出により大好きな設定やシーンがカットされ、あまつさえエンディングさえも変えられていたりして、がっかりさせられることが多いもの。この映画もやはり映画的演出によりあそこがナイここが違うなど多々ありましたが、そのほとんどがOKで、映像で見せる部分もかなり効果的で無駄なくテンポ良く、本もよいが映画もよいねーという稀有な作品になっております。
まずお断りしておきますがアタシは主演の織田裕二がでーっ嫌いなのよね。一時は顔を見るのも耐え難かった。今はそれほどでもないけれど、いかにも傲慢そうだし、人を見下して、鼻で笑って上機嫌って感じがしません? 実はかつて織田に似た奴を知っていてですね、そいつがそーいうスカシ外道だったんで、織田も嫌いになったのですわ。で、映画の前半は「そうそうこーいうヤな奴なんだよ」という属性そのまま、見下す、鼻で笑う、慇懃無礼のオンパレードでエリート意識丸出しのスカシた県庁職員をはまり役で演じてあげてワクワクします。え、嫌なやつの嫌な面ばかりをみせられて「あー不愉快っ!」と普通ならDVDを取り出したくならないのかって。だいじょうぶ。本を先に読んでいるアタシにとっては後に待ち構える、「織田、空回りのあげくすべてを失いボロボロになる図」にワクワクしてしまってしょーがないのであるよ。うほほほ、あんたが笑っていられるのも今のうちさ、ぐらいの感じ、たいそう愉快。そして、ついに己の惨めさに、雨に打たれ泣き、のた打ち回る姿を見るとき、「ああ、なんて楽しいのかしらー」と暗い快感に喜び震えるカタルシスといったら。ああ、たまらんぜ。一点文句を言わせてもらえるならば、つきあっているオンナとのエピソードに関して。原作のほうがより惨め度が高くてよかったのになと思うわけです。映画のほうは、ただの心のスレチガイじゃん、織田にはもっと惨めな末路を!
さて後半は、融和と再生ですな。泣きねずみとなった織田が己の不徳に思い至り改心し、謙虚であること、人に教わること、仲間と一緒に汗を流すことを覚え、スーパー再建のために奮闘するくだり。まあ、そこは、ええ普通におもしろく拝見いたしました。終盤での二人(織田、柴咲)の笑顔と、結局県庁が変わったのはそこだけかい!なオチとか、大好きです。でもやっぱ一番好きなのはボロボロになった織田。アンチ織田にはたまらない楽しい映画で、ここまでやるなんて少しばかり織田っちを見直しました、だなんて、ちと、くやしい。