ドラマ『魂萌え!』


なんてリアルなんだー。
演技がとか演出がとかそーいうことじゃなく、どこぞの家庭でも勃発しそうな家庭の問題があまりにもリアルなのだ。
遺産のことで言い争う息子と娘。醜いなぁと軽蔑しながらも、ついつい考えずにはいられませなんだ。もしもアタシの親父が突然死んだら、と。(んなこと考えてごめんね、父ちゃん)。まずドラマにあるような愛人問題は100%ない、そこは信用しております。でも遺産相続では兄と揉めたり…するんだろうか。さほどのモノがなくても揉めるっていうもんねぇ。母を引き取るか引き取らないか。実家を売るか、売らないか。細かい現実問題がわらわらと沸いてきて、お互いに「なんで自分が貧乏くじを?」みたいな骨肉の争いになってしまったら、それはかなりウツだ。
でもなホントはそれよりなによりも怖いものが前にあるんだよな。親を亡くすってこと。それは非常に恐ろしい。受け入れられん。アタシより先に逝かんでくれ、ぐらいのことを正直思ったりする。覚悟なんていくつになってもできん。
いずれにせよ、そのときが来たらどう振舞うかわからんが、どう対処できるかで今まで生きてきた人生が試されるのかもしれませんね。って、ああ、なんかドラマの感想じゃないとこに話が迂遠してるな。
戻ります。
高畑淳子、いいねー。焼香に訪れた愛人との最初の対峙はド緊迫でした。ティーカップに伸ばした手が、女のストッキング越しの赤い爪に気づいて、ためらう。「あの、お好きなんですか、ペディキュアが」「ああ、隆之さんが似合うっていってくれた色なんですよ」。ひどい…。動揺で手はがくがく、ティーカップが音を立て、飛び散る紅茶。愛人が去ったあとに残されたカップ。口紅の跡に女を感じ、そこから怒涛の"キレる未亡人”。カップを庭に投げ捨て、夫の遺品を狂ったように処分し始めるアタリの迫力はすごい。そこへチャイムの音で闖入者(宇梶)が…その正体は。なんてシュールな。。。静から動へ、動から静へ。丁寧な演出と丁寧な演技がうまくかみ合っていて、うならされました。
8年間音信不通でいきなりアメリカから帰国し、母親に取り入って妻子ともども実家に居座ろうとする息子。こいつがなんともろくでなしなの。飄々とした口調が「あー、いかにも居そう」と思わせる。で。はて、この俳優さんは誰だっけ。この疑問が喉に引っかかった小骨のように見ている間中アタシを悩ませました。長島一茂のようでもあり藤木直人のようでもあり、しかし前者にしては小柄すぎ、後者にしては骨太すぎる。わからん。エンディングのクレジットで判明したときは「ええーっ!」と。NHKドラマはこれだから侮れんね。
全3回とは短いがそれだけ中身が詰まっていそうだし、後学のためにも全部見ませんと。