南房総旅行レポ(2日目)

仁衛門島の岩場

母子してミステリ好きで内田康夫の「贄門島」を読んでおり、舞台となったこちらを訪れることに異存なし。アノ小説の中では違法な裏家業をしてたり、浅見探偵を軟禁したりするとんでもない描き方されてて「モデルがあるのにこんなこと書いていいの?」と心配になったもんです。果たして現物はどんなとこなんでしょ。アタシたちも浅見さんみたいに事件に巻き込まれたりしないよーにしないと〜などと思いましたが、いやあ、想像以上に小さい島で、ここからあれだけ想像力を駆使してお話を広げる小説家ってすげー(笑)。JR太海駅下車から徒歩12分。仁衛門島は、頼朝をかくまったことで子々孫々この島に住むことを許された平野仁右衛門さん一戸が代々住んできた個人所有の島。橋をかけたらという行政の要請をがんとして断り続けたということで島への渡りは手漕ぎの渡し舟だけなのです。実際に目の当たりにした島は、え、これが島っ?異様に「近〜っ」。100mも離れてないんじゃない?という距離を渡し舟に乗りこみます。船は人がきたら随時出航。客はぱらぱらと訪れ、すぐに乗れます。で、すぐ着きます。乗船時間5分? 水はきれいだし、島は小さいくせに起伏に富んで確かになかなかの景勝地。山、岩場、祠、歌碑など変化にとんでいて小さな冒険島という感じで、なかなか楽しいとこでした。

  • 次はどこへ?

太海駅からバスにのり、昼飯どきなので「鴨川まで出ればなにかあるかも」と出たはいいが「なーんもないねぇ」「どうしよう」…「どこ行く?」「特に行きたいとこも」「そーね、ないしね」とりあえず「勝浦海中公園でも行くか」ということになり鴨川駅からJRに乗る。「そこでメシを食っていいしね」。ところが車中でガイドブックを読んでいると「あ、清澄寺ってとこが古刹の面影があって結構大きくてみどろこありそう」と思いつきで天津駅で下車。ここからバス15分、のはずが…これが大失敗でした。時刻は12時50分。でも「12:25がでたばかり、次は15:10だって」「えー、2時間後かよ」。この時点で清澄寺行きは断念し、ガイドブックを開いてさらに作戦会議。「んじゃ、誕生寺ってとこへ行くか。鯛の浦遊覧船もそばだし」と、再び天津駅からJRに乗って小湊駅へ。

小湊駅からJRバス10分で「誕生寺入り口」下車。でも入り口ってだけあって、バス停から結構離れていました。とほとほ10分以上歩いてやって誕生寺前。鯛の浦遊覧船乗り場はそのまん前。日蓮上人信仰により保護され、水面近くで泳ぐ天然記念物の鯛を見ることができます。まず船の時間は「未定ですが、2隻の船が運航して、1台が帰ってきたら少してすぐに出ます。あと15分ぐらいですね」というので、船を待つことに。客はすでに30人ぐらい。さて、船は小型高速船。太平洋の波が高くて、ゆれるゆれる。アタシは乗船前の缶コーヒーが祟ったか、「こえーよ」と喜んで(?)いたのはつかの間、船酔いして「あー、気分悪ぃ…」。日蓮上人の立たれた岩とかいろんな説明は、気持ち悪くてスルー。「早く陸に帰りたい」とかなり弱気。母は元気で身を乗り出してみてました。さて一通り景観の案内が終わり、船はいったん停泊し、おじさんが窓を開けてまわる。おじさんが餌をまくと、水面におびただしい量の魚たちが浮き上がってくる。ほおお、こりゃすごい。その中にはかなり大きな鯛の姿もいる。「まあ、あら、すごいわねー」「うん…でもやっぱ早く帰りたい」。ま、具合さえ悪くなければ、これは見る価値あり。

3時過ぎ、やっと昼飯。遊覧船乗り場の入り口のところ、誕生寺正面。母はさんが焼き定食を注文。アジのたたきに味噌を入れたのが「なめろう」、これをハンバーグみたいに焼いたのが「さんが焼き」。店員さんは非常に感じよく、「すみません、船に酔っちゃって」というアタシに迷惑そうな顔もせず、お箸ととり皿を頼まないのに持ってきてくれました。でも食えたのは刺身のつまのダイコンと、漬物だけ。母は「あら、おいしいわ。ここにして正解ね」とパクパク。なんで年寄りのほうがこんなに元気なんだー。

で、誕生寺参詣。わりと立派でした。でもアタシはもう元気がなくて、とほほ。

さて駅へ戻りましょう。ところが次のバスは50分後! 反対方向へ行くバスをチェックすると10分後か。とりあえず移動しようと先に来るバスに乗ってみた。「でもさ、このバス行川どまりだって」「どうなってるんだろうねえ」「ってか、そこどこよ」「さあ」。だいじょうぶなのか? って大丈夫じゃありませんよー。着いたところは行川アイランド前。って、ここ廃墟じゃーん! 行川アイランドは平成13年8月31日に閉園。なんでこんな廃墟でバスが留まるの? 運転手さんに、ちょっと戻ったとこに行川アイランド駅(無人駅)があると教えてもらうが「電車とまりますよね?」「たぶん」おいおい。JRの駅は「天津-行川アイランド-興津」となっていて、前後の駅は快速も特急も止まるのにここは各駅停車のみ停車。そりゃそうよね、なにもないもん。目の前をスルーしていく何台もの電車を、打ち捨てられた駅で侘しく見送る。悲しい虚しい、腹減った…。「あのバスが悪い!なんで行川なんて中途半端なとこで留まるんだ! もう一つ向こうの興津駅まで行ってくれりゃなんとでもなるのに!」とバス路線の融通のなさをうらみ、「行川アイランドのフラミンゴたちどうしたんだろうね」「殺されたのかしら」などと話して暗くなる。ようやく30分後に止まってくれた電車で小湊駅へ出て、そこから特急電車に乗り換えて帰路に着いたのでありました。
1泊2日館山に泊まり南房総内房から外房へぐるりと一周した旅行で思ったこと。千葉はいまいち観光に値するものがない。あっても、ぽつんぽつんと点在していてつながりが薄い。観光地として廃れていくのもわかるなあ。海を見に来るだけならよいかもしれんが、千葉県内に住んでいても、熱海とか行くほうがぜんぜん楽だね。