『愛を弾く女』

美貌のバイオリニスト、寡黙な楽器職人、心優しき工房経営者。女1人男2人のクラシックに彩られた美しくも哀しき大人のラブ協奏曲
音楽は文句なしによいです。素晴らしい演奏というのはバイオリ二ストと職人の二人三脚なのね。アタシにはその違いを聞き分ける耳がなくて幸い。もしも聞き分けてしまう耳があったら街には不快な演奏が溢れてしまってそれはそれで大変だもん。
えーと、ネタばれしますね。
バイオリニストのエマニュエル・ベアール(地味にしつらえても美人)が、工房経営者(妻子持ちなのに…)と婚約する。ところがベアールは彼と工房の共同経営者である楽器職人に惹かれてしまい、気持ちを抑えきれなくなる。まあ、男のほうもおもわせぶりだったしね。カフェでふたりっきりになったときなんぞ、ふと言葉をとめたベアールが「アタシの話をきいてないみたいね」というと、「君の話す顔をみていたいんだ」。けっ。何処が寡黙で不器用なんだか。やっぱフランス人ってやつは・・・でもって、こいつ、「男友達とも女友達とも一緒にいるのは好きだ。でも人を愛するってことがよくわからない」と虚ろな顔をする。これが恋する女には淋しげな顔にうつる。芸術家気質の思い込み激しい女なら、私の愛の力で変えてあげるわ…ぐらいは思っちゃうよ(アタシは思わない)。だからついに、「こんなことを言うのははじめてなの。抱いて」「僕は君を愛していない」「ひどい!」なんて修羅場を演じちまうわけ。
でもさアタシの見るところでは、この職人は自覚のないホモセクシャルなんだと思うのよ。工房経営者の男友達のことが好きで、でも自覚はない。彼とベアールのことを知って動揺するのを、彼女に惹かれているからだと勘違いしているだけ。すべてアンタが自覚してないからややこしくなっちゃうのよ!と。まあ、異論は多々あるでしょうけれど。