ドラマ『零のかなたへ The winds of god』

今井氏の公演を見に行ったとき、涙も乾かぬうちのカーテンコールで「今井さんと目が合っちゃった〜!ぎゃー」とぬか喜びしたという、思込み半分以上の思い入れある舞台のドラマ化です。どうなることやらと舞台ファンの視線でチェック。
しょっぱなからヒロシかよ、なげーよ、カンベンしてーな、自転車で事故るシーンも、あーなんや冷めるわい、などとぐっさんの関西弁につられてエセ関西弁でぼやくアタシ。不安を感じさせるスタートで…いや、不安ってのはウソかな。舞台や原作ファンってのは端から期待してみてるわけじゃなくて、隙あらば「ここはダメ」と減点してやろうとはりきってみているもんなんです。ところが中盤からエンディングにかけて、ぐーんと盛り上がり、んでラストはしんみり。この性悪な舞台ファンをしてこう乗せるって、かなりデキがよいってことじゃない?
ぐっさんが演技巧者なのは周知、丸刈り森田剛も案外うまいじゃーんと大いに見直しました。森田君ってもともと眉毛が薄いので(剃ってるの?)、丸刈りしてると特攻隊は特攻隊でも暴走族の特攻のようでひじょーに笑え、それがゆえに現代っ子がタイムスリップしてきた違和感を宿してよい感じ。見た目はひ弱ワイルドで根は純情な金太なんです。愛すべきキャラだよな。だもんでラストに金太だけが、うううっ、だったときには思いがけないほど動揺。うおー、なんでなんだー!金太っ、うううっ(泣)。森田剛、Good Jobです!
特攻隊の面子もひとりひとりよかったねー。顔つきがきりり爽やかで、ああ現代の若者とは違うんだなという雰囲気が自然にしていました。ハンサムそろいだしー。ぐっさんの顔ぶくれや腹のたるみには、現代人の飽食の情けなさがにじみ出てました。西村上官もいい人なんだか悪い人なんだかわかんない、一途さがあったし。全体を通して泣きと笑いのバランスが絶妙で、泣きも押し付けがましくない。うん、舞台ファンを失望させない出色の出来栄えだった(なんてえらそーに)。靖国神社というのは、こういうふうに時代に殺された英霊たちの念を慰めるためのものだったんじゃなかったっけ、なんで今あんなふうにゆがめられて取りざたされているんだろうか、と改めて思ったのでした。