『ブルース・オールマイティ』

地方テレビ局のお笑い系レポーターを勤めるブルース。なにもかも空回りして仕事までも失ってしまう。「神様なんてくそくらえ!」と冒涜すると、「じゃあ、そんなにいうんなら君がやってみろ」と神様からその力の全てを授けられ。で、それからはやりたいほうだいの大暴走。そのつけで一番大事な「愛」を見失い…どたばた喜劇。
ジム・キャリーの旺盛すぎるサービス精神、すなわち暴走をどれくらい抑えられるかが、楽しめるコメディかどうかの鍵。で、これはぎりぎりセーフでした。そりゃ前半はかなり暴走ぎみでしたが、まぁ神様の力を授けられたら誰だってこれっぐらいのワルノリはするもんです。だから、OK。出エジプト記のモーゼの奇跡を、あそこまでせこく再現するトコは、秀逸。こーいうとこは、ばかばかしくて嬉しい。きっと私もやってみるだろうなぁ、たぶんお風呂で。
後半はオールマイティな力を持ってしても人の心を操ることはできない、恋人の愛をとりもどすことはできないと悟って苦悩する、シリアスな演技も要求される部分。しょぼんとしたとこが、とてもうまいです。かわゆし。
ジム・キャリーはとても繊細な演技ができる役者さんだとアタシは評価しているので、将来的にはロビン・ウィリアムズみたいなポジションにはまってくれるとよいなと思うのです。一時期は彼自身も意識して、『マスク』『エース・ベンチュラ』系のコテコテコメディから演技派に路線変更しようとしているのかなと思われるときもあったんですが、近作はまた『マスク』の新作だとか『レモニー・スコット』、昔のエキセントリックな芸風に戻っているようで、そういうのがアメリカ市場での受けがよいにせよ、役者としての彼に期待をよせるアタシにはとても残念。ま、地固めのためにはときどきの足踏みが必要なのかもしれませんけども。そういうふうに注目したのは彼が新境地を開くために挑戦した『ロングウェイ・ホーム』からですね。『ロング』の評判はいまいちだったみたいですが、アタシは好きだよ。
『ブルース』は、ありがちなネタをうまく処理して、なんも考えたくないときに見るコメディとしてはよいんじゃないかなと思います。ジムとジェニファーのかけあいも軽妙で、あ、そうそう、犬の演技は見逃せませんね(笑)。