『メイド・イン・マンハッタン』

スイートルームの客の服を遊び心で試着してしまったホテルメイドのマリッサ。上院議員候補のサラブレッド君に、滞在客と勘違いされて犬の散歩に同伴することに。たった一度の短い出会いで惹かれあう二人。しかし身分違いの恋は…シンデレラ・ラブ・ストーリー
旅館とか小さな会社を舞台にした昔のテレビドラマに、こーいうパターンが恒例でした。仕事はできないが愛されるキャラの平社員さんのところへ、老いた母が上京してくるとの知らせ。「どうしよう、実は支配人に昇格したと嘘の手紙を書いちゃったんです」「まあ、なんてことを。…いいわ、その日は一日だけアナタは支配人ってことにしましょう。みんな一致団結してお母さんをがっかりさせないようにしましょうね」「「「はい」」」ってな感じ。でも、絶対にどこかで尻尾がでて、バレたバレないで一騒動あり、去り際にたらちねの母いわく「ふう、お母ちゃんはね、最初からわかっていたわよ。お前が支配人になんかなれるわけないもの。でも皆さんがお前のために協力してくれている姿をみて、感動しちゃってね。これからもがんばんなさい」ってなとこで涙涙のまくぎれ。えーと、いい話なんでしょう、たぶん。でもアタシはこの、皆で嘘をついて一人をだますパターンのエピソードが昔から大っ嫌いなのでした。
さて本編は、相手の勘違いを、周りも協力して継続させちゃおうってな集団嘘パターン。勘違いされた時点で「あら、違います!」てなことを言えばすむんじゃないのか。まぁ、それじゃドラマになりませんものね。マリッサが嘘をついたのは「お客様からみればメイドなんて居ても居ないも同然だもの。でも一度でいいからアナタみたいな素敵なヒトにちゃんとアタシをみてほしかったの」なんてな動機から。それなりに同情できちゃうので、まあまあ許せてしまうのよね。嘘も1度くらいならねー。
でもさ、パパラッチされちゃうような立場のある人間に対して公の場であれこれすると、どこに波及するかわからんよなあ。もう少し相手の立場というものを考慮してあげたいもんです。と、またも小姑的指摘をしてしまうアタシです。ともかくも、ここではラブコメのシンデレラス系なので、そのへんについてさほど苦々しい展開はありません。嘘がばれたときのドカーンも小さめでした。
レイフ・ファインズ演じる上院議員候補の選挙参謀に、なにげに陰険そうなスタンリー・トゥッチが。いやいや、役者本人はユーモアにあふれた素敵なお人でありまするよ。DVD特典のNG集からも楽しいおっちゃんでしたし。でもなんだろうこの敵役のイメージ。たぶん最近どっかで、おおそうか、『シャル・ウィ・ダンス?』で竹中直人の役か、ん、あれはべつに陰険じゃな…おお、『ターミナル』での警備主任か。トム・ハンクスいじめがかなり陰湿のきわみでした。『メイド』ではとくに陰険じゃなくて役職に忠実なだけですが、はらはらしてしまいました。役名のジェリー・シーゲルってスーパーマンの作者と同名だね。意味はないだろうけど。
ジェニファー・ロペスはかわいいですねぇ。10歳ぐらいの子供がいるよう(という設定)にはみえません。御当人はいったいお幾つなんだろう。
面白いなと思ったのはホテルの人事異動の仕組み。副支配人が昇格でポストがあいたとき、従業員一同に「次の副支配人になりたい人は希望を出してください」と公募するの。「メイドからでもいいんですか?」「勤続年数が規定に達していればOKですね」。これは「マンハッタンなら誰にでもチャンスがあるのよ」というシンデレラストーリーの暗示でもありますが、こういうのって本当にある話なのかな?
全体的に悪乗りしすぎないので嘘つきばなしといえども悪い気分にはならず。シンデレラ・ストーリーが好きで、レイフ・ファインズのヤギ顔がOKならオススメ。