『幸せになるためのイタリア語講座』

田舎町で各々の悩みをぐっと飲み込んで生活している不器用な6人の男女が市役所の開いたイタリア語講座で集う。ハートフルでしみじみとした群像劇。
見始めてすぐ。
ん? こりゃどこの国の言葉じゃ、ひとこともわからん。デンマークかよ…。なんてなことも知らんで借りたとは我ながら大胆である。デンマークといえばアンデルセンハムレット。映画を見るのはほとんどはじめてか。『ダンサー・イン・ザ・ダーク』もデンマーク映画だっけ、あれ観てないけど観る前から苦手。
少しみすすんで。
ふっ、暗いぜ。リアルなシワ、シミ、吹き出もの、ぴたぴたのセーターで強調される二の腕の太さ、ブラジャーのゆがんだライン、くし通りの悪い艶のない髪、手足の震え、ものの落ちる音、咳払い、、、ああもう、なんてリアルな生活臭。海の遥かかなたデンマークだなんて国とは思えない、演歌的世界。ありがちなしみじみとした不幸、やりきれなさ、裏寂れた光景。誰もがみな、苛立ちや不満や怒りや哀しみを抱えていて。たのむから、そんなにすぐ声を荒げんといてくれんかのう。うううむ、憂鬱。
しかーし!
愛しいのです。どんどんどんどん愛しくなるのさ。一人一人がみんな愛おしい。皺もたるみも疲れも倦怠も失敗もぜんぶ、ぜーんぶプラスにみえてくる。なんか胸をつかれるのだよね。後半になるにつれて登場人物の顔にどんどん笑顔が浮かぶ瞬間が増えていき、そして、「現実は厳しい」、でもっ、愛しいのだ!と、多幸感がぽこんぽこん。
誠に良い映画を観させてもらいました。しゃーわせ。地味だし淡々としすぎて万人受けしないかもしれんが、あばたは笑窪だ、蓼食う虫が好き好き大好きだぜこんちくしょーって感じで、もすこし自分を好きになれそうな気になってきます。