『フォーチュン・クッキー』

衝突してばかりで相手の気持ちが理解できない母と娘、中華料理店でもケンカをおっはじめる二人に、みかねたチャイナおばはんが仕掛けたフォーチュンクッキーの呪い。翌朝目覚めるとお互いの体が入れ替わっていた! おお、ベタや。母親の結婚式のリハーサルは明日だし、その日はアタシのバンドがオーディションにでることになっているのよ! そのうえ娘とそのボーイフレンドと母ちゃんの微妙な三角関係にまで発展し……ファミリー・コメディ。
うん、予定調和なりにオーソドックスなつくりで面白かったっす。
正直言うとどたばたはあんまり好きじゃないのだけども、特典映像にちらりとうつった元ネタ、ジョディ・フォスターの『フリーキー・フライデー』(英語タイトルはリメイクもフリーキー・フライデー)は、パトカーが真っ二つに分かれてそのまま走っていくようなはちゃめちゃぶり。リメイク版の脚本家いわく、ベタなドタバタは最小限にしてティーンエイジャーの気持ちにスポットをあてたとか。その狙いは正解でした。
入れ替わる前は道徳的母親に対して、ロックに入れあげる蓮っ葉な娘という構図でしたが、中味が入れ替わったあとでは、実は娘のほうがよっぽど役に立ち、性格も素直だったりする。母ちゃん、ちと立場がなくて気の毒かもね。ま、ある程度は自業自得だが。子供の延長に大人がいるといえども、やっぱ子供の気持ちなんてわかんなくなっていたりするもんです。
「ヒネてる」弟君の小学校の父兄面談に乗り込む母(娘)というベタなエピソードもうまい。弟役のチビっ子がおそろしいほど曲者演技をみせておりました。子役ってすごーい、こわーい。
ジェイミー・リー・カーチスはもう巧くて当たり前。ティーンエイジャーのぶちゃいくさと純粋さをぞんぶん愉しんで演ってます、ってな体当たり演技は面白すぎです。攻する娘役のリンゼイ・ローハンがまた引け目をとらぬ素晴らしい娘(娘)と娘(母)の演じ分けをしておりました。リンゼイは、実は11歳のときに『ファミリー・ゲーム/双子の天使』で双子役を一人で演じた子役さんだったようで、ふむ、『ファミリー』はてっきり双子をつかったのかと思っておりました、今の今まで。歌も巧いし、アイドル女優といえども侮りがたし。
母の婚約者くんは「お、どっかでみた!」と思うお方でした。どこでかは思い出せなかったけども、『プレディシオの男』『君がいた夏』とかとか。ちと長塚京三に似とりますな。
ドタバタも手堅いつくりでスマート。エンドシーンも数パターン撮った中から、一番しつこくないやつにしたのも功を奏しております。