『ロイヤル・セブンティーン』

ウエディングシンガーの母と暮らすNYっ子ダフネは、まだ見ぬ父(実は公爵さま)への思慕と、自分のルーツを探すためイギリスへ向かう。公爵家に入り込んだまではとんとん拍子だったが、父の婚約者親子も同居していてまるで継母と継娘に意地悪されるシンデレラ状態。しかしダフネは強かった。持ち前の明るさとアメリカンな言動で「自分らしく」振舞うが…ファミリーロマンチックコメディ。
伝統と格式の中に放り込まれたアメリカ娘のあばれはっちゃく、というありふれたパターンのおとぎ話。しかしハッピーエンドで後味良し。
主役ダフネ役のアマンダ・バインズの可愛らしさ。竹内結子からじめじめした部分をとっぱらった感じの子。いくぶん上向きの鼻とか、ぷっくりほっぺなんぞがちょっと似てません? ぱっと見は映画スターというよりは、健康はつらつなお隣の姉ちゃん。もっとも団地にAV団地妻がいないように、お隣のお姉ちゃんなんてもんがお隣に住んでたためしなしですが(え、最近はリアルAV団地妻が棲息してるって!?)。アマンダの英語は発音も発声もくっきりとしていていすごく聞き取りやすいので、英語ヒアリングの教材にもよさげ。
相手役の男の子はキアヌ・リーブスをどんくさくした風情の好青年。妻夫木君っぽいかな。でもま今回はおいしい役だったし、いやみ青年が身を挺して引き立て役になってくれたので魅力は5割増しだよな。特に彼でないと、ということもない。
公爵役のコリン・ファース。うううむ。もう、うなるほど素晴らしい。公爵だが、その実態はただのシャイな親父。でも、かっこいいんだな、これが。いいなあ、生き別れた父ちゃんを捜しに行ってこんなダンディなおっちゃんに当たるんだったら……。そーいや『ラブ・アクチュアリー』でもコリン氏はシャイガイでしたね。シャイが持ち芸か? 『ラブ・アク』では今回の娘と年齢的に大差ないスペイン娘とのロマンスでした。実際、アマンダとカップルであってもおかしくないかもというシーンもあり、いや、おかしいか…ううむ。とにかく、シャイは誇ってよい持ち芸ですぜ、ダンナ。
公爵の婚約者とその娘の典型的な意地悪っぷりも、陰湿すぎなくてよいです。婚約者のあごが2つに割れているのが気になって、彼女がでてくるたんびに、「ああ、やっぱり割れてる…」と注視せずにいられないのがたまにきず。
さて、DVDで借りたならば特典映像はお見逃しなく。監督キャストスタッフのこの映画を愛しく思う気持ちがじんわり伝わってくるようなよさです。特に、メニュー>ギャラリーの「ファッションとエチケット」が楽しい。ただしネタばれ映像が多いので、絶対に本編を見る前には見ないが吉。ギャラリーメニューにはささやかな隠しコマンド(?)なんぞもありまして、ま、実際見つけてみても隠すほどのもんでもないですが、隠さないほどのもんでもないので、こうしたのはアイデアですね。「これだけかい!?」と思うけれども、ちょっとだけみつけた自分が嬉しくなる、と。あと、アマンダの音声ガイダンスで映画を見るのも楽しいです。ほんっとに明るい女の子やね〜。つっこみを入れつつきゃいきゃい一緒にみている気分があじわえます。しかも、主演女優と見るなんて、すごい特等席だよね。
ところでさ、こういうアメリカ娘の型破りパターンの映画をみていていつも思うのだが、アメリカでの「自分らしくあれ」ということは、TPOをわきまえるということは相容れないのだろうか、いやはやまったく。イヤなことはイヤと意思表示する、ま、それはよろしいのだが、なにも今ここで言わんでもよかろうに、おいおい、そこまでせんでもよかろうにと思いまするよ。どっちかっちゅーと、礼節を重んじ伝統や格式にそれなりの敬意を払うべきと考える堅めのアタクシめと致しましては、コメディとしての笑える範囲である「ここまで」という一線を踏み越えられて不愉快な思いをすること多し。『ロイヤル』でも、うーむ、ダフネちゃんそれはちと踏み越えとるじゃろうと眉をひそめるところはありました。でもまあ、不愉快になるほどではないですけども、ひどい映画になると、茶化しすぎてマジ不快で早回ししたくなりますもんね。この映画での救いどころは、アメリカ娘に土足で踏み込まれたイギリス上流階級の人々がわりかし鷹揚に懐深くほほえましく受け止めているとこです。そりゃ、そうじゃないおヒトもおりますが、だいたいにおいてそうなので、そのへんが後味のよさにつながったのかなと。彼女の味方になってくれる心の温かい人たちの存在で、アタシのひそめた眉のほうこそなんだ、心が狭いぞよ、と言われたような気にさせられちゃいましたから。もちろんできすぎのハッピーエンドも楽しく見終えることができた大要因ですが。