『Shall We Dance?』

あら、これはなかなか良作では?と思いましたです。けろりと笑えましたし、見終わって心の底から「アタシも踊りたいっ!」ってなパッションの泡が(ぐつぐつではないが)ぽつぽつとわきあがってきたのも、周防版に劣らず、周防版に対するレスペクトも感じられますし、うん、これはなかなかよいのではないでしょうか。
ほれ、ただでさえリメイクってのは不利でしょう。元と比べて、ここが違う、えーアタシの好きなこのシーンがないなんて!とか、窓辺のロペスは不気味だし、ダンス教室の周辺が場末て怪しげすぎー、ラテン竹中はもっとえぐかったとか、ちくちくと重箱の隅をつついたような非難がましい目でみちゃいますでしょう。そのうえその元ネタが邦画だもんでね、ちくちく度は増すわけで。アタシも周防版は3回以上観たし、この映画で役所ファンにもなったので、序盤はどうしても、周防版との違いを重箱の隅をつついちまいました。
でもギアの表情がときどきものすごく役所さんに重なるときがあって、かなりもとの映画を研究したのかな、ほお、と感心し、シャイでいい香りのする中年という設定に、なるほどリチャード・ギアというキャスティングは絶妙かもね、といつしか好意的に。
他のキャスティングもGoodですよ。竹中も渡辺も田口も、そのほかのサイドアクターも、それぞれにいい。ジェニファー・ロペス草刈民代にあったダンサーのストイックさ、神秘性は望むべくもないが、かわいらしいし、ギアさんが惹かれる気持ちもわからんでもない。社交ダンスがあれだけエロいのもラテンの血の功績ですしね。いやぁ、あれはヘタなベッドシーンよりゃよっぽど生ツバ。昔、『恋に落ちて』*1という映画の中で精神的不倫をしていたダンナと妻の会話に「その女と寝たの?」「いや、寝てない」「寝てないのよりも、そのほうが悪いわ」というのがありましたが、確かにギアもロペスも寝るどころか、キスさえもしやがりませんが、アタシもこのほうがよっぽど悪いのではないかと、ええ。
さて邦画との大きな違いは、スーザン・サランドンという大物を配することでギアの妻役によりスポットがあてられていたことでしょうか。中年夫婦の愛の再生ドラマになっていました。愛の再生か…ふっ。
さて、しかし。いや、しかーーーししかし、ここでアタシは強くいいたいのですよ。ダンナに秘密をもたれたことで傷ついた妻に、己の胸中をあかすギアのセリフ。あのセリフ、あれは何なのですか!? あれを詭弁といわずしてなんとしょう。そりゃま詭弁だろうがなんだろうが、当事者たる奥さんさえ納得すりゃ、はたからは何をかいわんやですがね。まあね、中年の夫婦間で嘘でもあそこまで言ってもらえりゃ、うるっとくるか、で、満足か。それでも奥さんへのフォローがあれで終了だったら、アタシはやっぱり端からでもぎゃんぎゃんわめいて、森夫妻の内情を訳知り顔でもらす和田やら美川やらみたいになっちまったかもしれません。そうならずにすんだのは、そのあとに、さすがハリウッド、そこまでやるか!?な詰めを決めてくれたればこそ。で、よしとします。
えーと、ギア様もみなさまも映画の出来も○でした。でも◎は、ミニチュア・ベッド・ミドラー的なリサ・アン・ウォルターさんにあげたいな。

*1:1984年米、出演:メリル・ストリープロバート・デ・ニーロ他、ダブル不倫純愛もの恋におちて [DVD]