光原百合著『最後の願い』

資産家の娘のホームパーティで無残に手折られた薔薇の花。さだまさしの詞になぞらえて「花をちぎる勇気もないひと」と袖にされた男の仕業と思ったら、え、あんただったの!? いあわせた妙なにいちゃんがその真相を暴く…ついでに行く先々で劇団の仲間をスカウトしてゆく(って何を出し抜けにっ!?)。小劇団旗揚連作ユーモアミステリー。さて初演の幕は無事にあがるのか?
想定やタイトルから想像した『いま、あい』路線とは、いやはやまったく違うので最初はめんくらっちまいました。でもおもろいのでよしとしよう。文章のリズム感がかなり好きやで。
前作『十八の夏』(短編集)にも小劇団のうだつのあがらない男が登場してくる小編があったが、本書のあとがきによれば著者は小劇団フリークなのだね。一度見たらはまっちゃったのよーん、というところか。激しくわかります。アタシも大学生の頃には週一ペースで見まくっておりました。いまは見なくなって久しいけども、もはや小劇団なんて時代でもなし。いやさ、そんなこともないんでしょうかね。多少のはやりすたりはあるにせよ、いつの時代もかわらこじきを標榜して気勢を上げている若者(および元若者)らの息吹は脈々と受け継がれておるのだろう。己がかかわりなくなったとたんに世間もだいたいそんなもんかと思ってしまうのは、大きな間違いですよね。はて何の話やら。
ああそうか。この文のリズム感は小劇団の芝居そのものだわ。