『フォレスト・ガンプ』

何度も見ている映画は好きなシーンを楽しみに待つという見方をしますよね。
アタシのお目当てその1はダン中尉。ベトナム戦争時のガンプの上官です。先祖代々軍人の家に生まれた彼は戦場で死ぬのこそが己の運命だと信じていた。ところが重傷を負ったところを不本意ながらガンプに助けられてしまう。両足を切断しおめおめ生き延びたことを悲観して退役後は自暴自棄になってほとんどホームレス寸前。フォレストに誘われた蝦採り船に乗り込んで、大嵐の中でマストの上で天に唾し「わはははは〜」と高笑いする大バカモンです。まあ、男の場合、大バカモンとカッコよさは紙一重だったりしますからね。やがて立ち直ってガンプに「命を助けてもらったことのお礼をまだ言ってなかったな」と謝意を伝える。このときのいささかひねくれた素直になりたいけどもなりきれない言い方も中尉らしくてよいです。なぜか海にドボンと飛び込んで一人でどんどん泳いで言っちゃうダン中尉。サ、サメがでたらどうすんじゃい? フォレストいわく「このときダン中尉は神様と仲直りしたんだと思います」。初見のときのアタシは、そんなアンタどこまで泳いでいくつもりやねん…神様とって、え、まさか自殺したの?と本気でどーいうことかとうろたえました。
アタシを不安にさせる中尉の魅力、危うさ。それすなわち俳優ゲイリー・シニーズの魅力なんですけどもね。ゲイリーの壊れかけたイロケにアタシはいつもくらくらです。『アポロ13』しかり、『ミッション・トゥ・マーズ』なんぞはそのきわみ。とにかくかっこいダン中尉は最後には生えないはずの足まではやしちゃう、奇跡の男なのです。んでもって嫁さんが東洋系で欲のなさそうな人だったとこも◎。
で、中尉が見所その1というからにはその2もちゃんとある。ババちゃん関連ですね。ババはベトナム戦争のときの戦友。そう蝦蝦蝦の黒人のあんちゃんです。彼の蝦談義もおもしろいけどもご本人は残念ながら戦死してしまう。しかしフォレストが蝦長者になるヒントはすべてこのババが与えたものなのですね。アタシの好きなシーンは、フォレストから蝦で儲けた金の半分を贈られたババの母親が小切手の金額に卒倒しちゃうとこ。そして「ババのお母さんはもう台所で働かなくてよくなったんだ」というフォレストのナレーションにかぶって、優雅な生活を満喫しているところ。このエピソードはホントに2カットぐらいしかないんだけども見てて嬉しくなるので、毎回絶対に見逃さないぞ!と待ち構えるのですよ。