加害者のプライバシー


犯罪が発生して犯人が捕まれば、どこの誰であるのかを私たちは知ることが出来る。未成年者の場合を例外として。加害者が未成年(あるいは心神喪失者)であればたとえソレが無差別殺人であったとしても、彼/彼女の個人情報は一切明らかにされない。被害者の遺族ですら、彼/彼女の供述内容も裁判の経緯もその詳報を知ることはできない。顔見知りによる犯行でないかぎり、家族がどこの誰に殺られたのか、犯人の顔すらもわからない。加害者は徹底的に保護される。被害者が未成年であった場合は、逆に暴かれるだけその個人情報は暴かれつくすというのに。

未成年加害者の情報を開示しない理由は「彼らの将来を慮って」のことである。つまりは死んだ人間には将来がないから慮る必要がないが、生きている人間にはどんな輝かしい未来も待っているかわからないじゃないかというわけだ。なるほど、道理である。未成年のケースではないが、スマトラ沖地震津波被害者遺族からの被害者の氏名好評を控えて欲しいとの要望はほとんど無視された。今の法律では殺され損である。裏を返せば、殺し得。

アタシは未成年だろうとなんだろうと情報を開示すべきであると基本的には思う。アタシたちは自分で自分の身を守る権利がある。知ることはその権利を行使するのに必要なことだから教えて欲しい。すべての犯罪においてとはいわない、せめて殺人者の個人情報はさらしてもいいんじゃないかと思う。イギリスで数年前に幼児を連れ出して殺した2人未成年者の氏名をあえて公表したりしてたよね。さらすことによって社会的な制裁を受け、己の行為の重大さを身をもって認識する。だって、そうでしょ。それだけのことをやったんだから。その恐怖は犯罪抑止につながるんじゃなかろうか。
奈良県の女児誘拐殺傷犯をきっかけに、再犯を犯しやすい性犯罪者情報を積極的に管理していこうという動きがある。

実際に個人情報をさらされた場合、犯罪者はどのような差別を受けるだろうか。刑期を終えてもかつて暮らした家(場所)にそのまま戻ることはかなり難しい。同じ町内で起こった犯罪の記憶が町内から風化されることはない。ただしここまでは開示うんぬんに限ったことではない。引越しをし、両親の離婚などによって法的に苗字を変え、学校に戻るかあるいは就職をしようとする。
情報が開示されれば当然、前科情報管理は徹底される。おそらく人事部で個人情報データベースを検索すればすぐに彼/彼女の前科情報が雇用者に通知されることになるだろう。彼/彼女を受け入れる人権家の雇用者(教育者)にめぐり逢えるまで、収入もなく、毎日なにもすることがなく、暇をもてあまして過ごす。インターネットにはまり、悪名高い2ちゃんねるに常駐したりするんだろう。「社会が悪い、親が悪い」、育まれる被害者意識と悪意。手持ちの金がなくなれば気持ちの余裕はさらになくなる。やがて自棄になるか、開き直るか、そしてついには新たな犯罪の火種を生む。ヨーカドーの幼児殺傷事件のように。
犯罪者を隔離しつづけることはできない。受け入れなければとはいう気持ちもある(度量はないが)。彼らをうまく社会に適合させるには、適合しやすい環境を作ってやる必要があるだろう。現実問題、隣人に犯罪者が越してくることは当然ありうる。そのときにその事実を知ったほうがいいのか、知らないほうがいいのか。どっちが平穏な生活は維持されるだろうか。ケース・バイ・ケースか。
そう考えると、短絡的に人のせいにしやすい馬鹿な未成年の場合は、とりあえずプライバシーを保護しておいたほうが安全なのかもしれない。その目的は「彼らの将来」よりも「彼らを再犯者にする危険性を減らし、社会の安全を守る」ことなのだ、きっと。そうでも思わないとやってらんないし。