『五線譜のラブレター』

すごくいい映画だけども、ま、ヒットはしなそう。
ケビン・クラインはどこを切ってもいい役者だし、アシュレイ・ジャットは雰囲気がよいし、ドレスが似合うのよねぇ。ああ、うっとり。そうそう、衣装デザインはアルマーニだそうです。
ゲスト出演する歌手たちも超豪華。ナタリー・コールエルヴィス・コステロシェリル・クロウダイアナ・クラールアラニス・モリセットロビー・ウィリアムス、マリオ・フラングーリス、ララ・ファビアン。っつてもアタシは顔が出ても誰が誰やらわからぬ体たらくであるが、本物の歌声はそんな体たらく女をも息を詰めて聞き入らせる力があるものです。ケビンもブロード・ウェイの舞台で歌ったり踊ったりしていた人だけれども、やはり本職の歌手に比べると…。でも歌はうまさだけじゃないからね。そこをカバーするのが彼の生みだすコールポーターの存在感じゃ。
筋は「夜も昼も」「ビギン・ザ・ビギン」などのおなじみに名曲とともにつづられていくが、コール・ポーターという稀代の作詞・作曲家の成功物語というよりも、男(!)遊びにうつつをぬかし、糟糠の妻を泣かせる夫が、本当に大事なものはなんなのか気づくお話。ケビン様ってば、『in&out』でも小指立て系だったけども、またもや小指おったて系…。バレエダンサーとの熱い抱擁やきぬぎぬの別れシーンなどもあり、おおお(喜)。男性の社交場のようなものもでてくるし、彼の華麗な男遊びぶりが笑えて、ときどき泣けます(笑)。ケビン氏には独特の品位があるので道ならぬ恋ぐるいぶりも「もう、仕方ないなぁ」と微笑んで許せてしまう。とはいえ、それがどんなに妻を苦しめたかを考えると「仕方ない」じゃすまされないんだが。
丁寧なつくりと、ミュージカル華やかなりし頃のハリウッドへのオマージュ、贅沢な音楽で1700円出して見る価値はアリ。それにしてもハリウッドの老けメイクは自然すぎて女泣かせだわ。一瞬「え、アシュレイ・ジャッドってこんなに目じりに皺があるんだ。へぇ〜」と錯覚するほどだもん。

  • 余談

帰路のおはなし。アタシが「意外とよかったね〜」と素直に感想を言うと、ご同行いただいたR嬢「なんで今、コール・ポーターなの? ハリウッドは相当ネタ切れなのかねぇ。(映画前に流れた予告編の)『TAXI』*1もそうだし」などとヒドイことを。ま、アタシも首肯しつつ「『TAXI』よりも(映画前に流れた予告編の)『エイリアンVSプレデター』こそその最たるもんじゃない? えーい、もうネタがない。こいつとこいつを戦わせとけ!みたいな」。こいつとこいつを戦わせとけシリーズで記憶に鮮明なのは、ジェイソンvsフレディなんか。でも古典的な手法だもんね。フランケンシュタインがドラキュラと戦うとかなかった? 狼男だったっけ、ま、そんなやつ。
ちなみにコールポーター映画の前に流れた予告編は覚えてる限りで言うとあと2つ。1本は『スターウォーズ エピソード3』、うーん、これはもはや古臭い感じがしちゃったよ、あとはロボット社会を舞台にしたCGアニメだし。ううむ、も少しがむばってくれ、ハリウッド〜。

*1:フランスの同名作品をクイーン・ラティファ主演でハリウッドがリメイク