綿矢りさ著『蹴りたい背中』

ハブなハツがアイドルおたくな蜷川に抱くねじれた友愛。
うううむ。すごいとしか言えない。あのこぎれいな娘のどこから生まれてくるんだろうか、この陰陽は。共感というよりも、痛いところをつつかれるニガさ。瘡蓋を剥がされるような感じ。でもとにかく一気に読んだ。おもしろかったから。まいるね。いや、こわいな。
デビュー作の『インストール』も読みたくなって、本屋さんを覗いたら綿矢りさ攻略本のようなもの*1まで並んでいてびっくり。綿矢嬢が教育学部に在籍中の某早稲田大学文学部の学生が書いたものらしい。文学部は作家志望の巣窟なんだ。へ〜、理系のアタシはそんなところに関心したりしつつ、ぱらぱらとめくる。本文が大量に引用されていて、まるで教科書ガイドみたい。傍線やらなんやらで、重箱の隅をつつくような批評の数々。「この文のここが不要。説明過多がまずいのは文学の基本だというのに」なんたらかんたら。うーむ。文学おたくってのもこわい。
この後続けて読んだ『天国の本屋 恋火』*2があまりにもかすむ。まあ相手は芥川賞受賞作だもん仕方ない。

*1:『綿谷りさのしくみ』小谷野敦他著 太田出版

*2:天国の本屋 恋火 (小学館文庫)天国の本屋でバイトすることになったリストラピアニストの僕の物語と、下町で花火大会を復活させようとはりきる私の物語が平行してすすみ、クライマックスにピアノの音色とともに切なく重なる。なんて書くと素敵だが、まあ甘ったるいです。竹内結子主演で映画化と。まあ、それはぴったりかなとも思う。しかし竹内、また黄泉がらみの話かい…