よちよちヒール


慣れないハイヒールで無理をしてよちよち歩きになっている女性なんてのがいる。最近はあまりみないけどねと思っていたら、通勤時に一週間ほど立て続けに見かけるようになった。通勤時だからもちろんいつもおんなじ人物である。たいていアタシの20歩先くらいを歩いて、いつも後ろからとっくりと観察してしまう。履いているのは、ピンヒールのミュールみたいなやつ。ヒールは5センチあるかないかといったところなので格別高いというもんでもないが、彼女の150㎝に満たない身長だと7cmに匹敵するかもしれない。なんでそんなに必死に歩くの?と思ってしまうほどに急いでいるふうな足の運び。しかし実際の速度はでていない。まるで歩きを覚えたばかりの子供が速く移動しようとがんばっているふう、なんて見方は少し意地悪いかしら。慣れていない靴で無理な動きをしてバランスが崩れていることもあって、必死にみえてしまうのだろう。本人はそんなに必死なつもりはないのかもしれない。ではみっともないかというと、実はちょっと違う感想がある。その姿はみっともないというよりも、なにやら可愛いらしくもある。中国の纏足は女性のよちよちとした動きが愛らしいということでやらされていたが、それをやらせていた男性の気持ちもなんとなくわからなくもないなと思ったりもした。それでもやはり歩きづらいのはやっぱりしんどそうだよ。だからこの現代日本のOLさんには、ぺったんこなパンプスにしたらいいのにとアドバイスしたくなった。しないけど。そしたら今朝の彼女はかかとのないサンダルを履いていた。あ、と思った。かかとのないサンダルでも彼女の動きはほぼ同じだった。