藤田宜永・小池真理子著『夫婦公論』

小説家夫婦の日常をここまで書くかと驚くほどざっくばらんにさらけだしたエッセイ。
ひとつのテーマで書いたら、次に相手がそれに返すという丁々発止のバトルがおもしろい。小池真理子さん、写真や作風から才色兼備でとても上品な女性なんだろうなとの思い込みが小気よく裏切られた。確かに才色兼備は間違いないが、当たり前におならもすればクソもするアタシらと変わりない普通のおばん予備軍だったのだ。鷲尾いさ子*1並にうんこうんこと連呼しまくる「初めてのうんこ」は衝撃作。
結婚したばかりの当時、楚々とトイレから戻った新妻に「うんこだろ?」と地雷を踏む藤田氏。(下は藤田氏側のエッセイから抜粋)

「何で分かるのよ?」
「突然、貴婦人のように歩くからバレちまうんだよ」。
かみさんは顔を赤らめたまま、笑い転げていました。
こうやってわが家は、排泄に付きまとう、あの何ともいえない独特の雰囲気を壊してしまったのであります。この儀式を通過したことで、私たちは恋人から夫婦に移行したように思います。

臭いものに蓋をしてはいけないのである。みごとなうんこ解禁には藤田氏の緻密な計算があったようで、そこはダンナに一本である。
とはいえ、結婚した当初はどうせすぐに別れるだろうと周囲から言われまくって10年連れ添った夫婦の内情を垣間見ると、大きな子供のような藤田氏を聡明な妻がはいはいといなしているふうが顕著にうかがえて、この勝負は真理子さんの勝ちかなという感じ。まあ、夫婦に勝ちも負けもないが。

*1:ガン、糖尿病、高血圧という三大成人病を扱った笑劇映画「僕が病気になった理由」で女医を演じた彼女が、ガンノイローゼで立てこもった患者にスピーカーを口に当て往来で連呼しまくった姿はもはや伝説。「貴方はガンではありませーん! (レントゲンの影)それは、うんこですっ! うんこなんです!」。たいそう気持ちよさそうでした。ボクが病気になった理由 デラックス版 [DVD]