曽我さん家族と再会


顔つきっていうのは、気持ち次第でこんなにもかわるものなのだとあたらめて思う。すさんでいるとき、壁にぶつかって立ち往生しているとき、ストレスをかかえているとき、カルシウム不足でカリカリしているとき、腹が痛いときなどなど理由はさまざまなれど、なんらかの負のエネルギーが蓄積されると、どんなに綺麗なヒトでもアレっというような歪みやよどみが顔にあらわれる。逆に正のエネルギー、例えば仕事が順調なとき、好きなヒトがいるとき、褒められたとき、朝の目覚めがいつになく気持ちイイとき、内面の輝きが表情だけじゃなく皮膚の色つやにまで影響していたりして、あ、なんだか今日のアナタはキラキラしているな、この人いいな、と何処かで誰かが思っていたりする(とよいね)。再会が決まってから曽我さんの表情はものすごく変わった。まさにいきいきとはこういう顔をいうのだというように。
1年9ヶ月前に帰国したばかりの彼女の写真を今現在と並べてみると、ずいぶんと面立ちが違う。まあはっきり言うと、太った、だいぶふくぶくしくなっちゃったよね。親戚や友人があれも食えこれも食えといろんなご馳走やらなんやらを持ってきたりとかしてくれたろう。幸せぶとりか、うん、それもあるだろう。日本に戻って安心しただろうし。でもストレスのせいもあったんじゃないかなとも推察する。精神的なバランスの乱れが体形の変化につながるというのはよくあること。会見やテレビで流される日常の一コマ、太っているのにやつれた感じがしませんでした? 残してきた家族への愛情の強さゆえにどんどん心配疲れしていく中で「大丈夫です、がんばります。ありがとうございます」と発言する姿が痛々しくて、そんなふうにカラ元気を発動させしまっていることに、なんだかアタシはとても申し訳ない切ない気持ちになってしまったりしたものですが。
ところが再会が現実のものとして具体的に決まってからは、ちょっと太った曽我さんはなにやらとても愛くるしい。ときどきみせる表情がまるで少女のようで、ああ、そういえば、こんな表情は父親と再会したときにみせた甘えた表情以来じゃないか。夫との、娘との再会を心待ちにする悦びが素直に顔に、うん、顔だけじゃなくて身体にも表情というもんがあるのだね、体の動きにもしあわせ感でがうりうりでてきて、曽我さんってこんなに綺麗だったっけ、なんかこの人かわいらしいなぁ、そんなふうに思いながらアタシは今日のニュースをみておりました。
ジェンキンズ氏についても、いままでは、米軍当時の写真、北朝鮮の反米ドラマに出演した映像、近影はベッドで気難しそうな顔をしているところ、そんな映像でしかお目にかかっていなかったから、意外としゃっきりとした、そりゃまあちょっとばかしいけずそうではあるけどもどこにでもいる頑固オヤジ、わりかし普通のヒトだったのね、当たり前か、などと認識を軌道修正したりして。認識の修正といえばもうひとつ、再会したご夫婦がいきなりキスしたのには根っから日本人なアタシは面食らいましたが。結構長かったし。北朝鮮でもそういうとこはアメリカ式なのね。
これで関係者の面子も保てたようだし、なんにせよ再開した家族を含めてあの場に居た人たち全員が嬉しそうにしていたのがなにより。あの一家がこれからどこに住むことになるのかよくわかんないけれども、いっそのこと家族全員が一回りどころか二回り三回りも幸せ太りするのもよいね、などとわけのわからんことをわりと真面目に思うのでありました。